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税務・会計

第80号 BS「格言」 其の二十六

会社を守り抜くための緊急対策

其の二十六

損益不正はバランスシートにあらわれる

 

 私は、不正発見が大好きな会計士です。
 
 架空売上の存在は、損益計算書を見ただけではわからないことが多いものです。しかし、バランスシートを見れば、一目瞭然です。
 
 まわりの会社の業績が良いといわれている時代は、不正会計、つまり粉飾決算が増加します。
 他の会社の業績が良いのにうちだけが悪いと今後の経営に悪影響を及ぼすなどの動機が芽生え、売上等の架空計上などを行うことがあります。
 
 不正会計の端緒を把握する為には、バランスシートを中心に、特に資産に着眼して分析を行います。
 粉飾は、一般に、売上の過大計上や原価・費用の過少計上による利益の拡大を意味するため、損益計算書上の話のように思われます。
 しかし、損益計算書上は、正常な取引と架空取引等の異常取引が混在するため、不正の端緒の把握が通常は困難になります。
 つまり、損益計算書をみただけでは、不正の存在すら分からないことがあるのです。
 
 粉飾が行われた場合、ほぼ100%、バランスシートにその影響が派生します。
 例えば、架空売上は、架空売掛金として計上されてしまいます。損益計算書での不正の膿は、バランスシートに沈殿していくのです。そして、徐々に、その姿を現していきます。
 最初の架空売上高は少額でも、売掛金は通常、未回収になる為、その残額は徐々に増加していきます。
 ですから、不正を暴く為には、損益計算書より、バランスシート、それも資産に着眼して、その兆候を把握していくことになるのです。
 しかし、入金まで仮想された場合、お手上げになることもあります。
 
 多くの経営者は、損益計算書ばかり見ていますが、仮の姿で、一喜一憂しているようなものです。
 本当の姿はバランスシートに潜んでいるものです。損益→バランスシートという流れがいつもあるからです。
 
 ではバランスシートの負債は不正には関係がないのでしょうか。
 過大利益計上に伴う負債への影響は、負債の過少計上、具体的には、簿外負債になってしまうことが多いため、バランスシートには記載されることはなく、負債からでは、不正の端緒の発見は困難なことが多いものです。
 このことは決して負債は無関係という意味ではなく、資産面からの方が、不正の端緒を掴みやすいということです。
 
 このようにバランスシートに着眼して不正を発見することになりますが、先ず、なにから始めるかといいますと、バランスシートの月次残高推移表の作成からスタートします。
 最低でも過去2年間分、つまり24か月分のバランスシートの各勘定科目の残高の推移を一つの表に表します。
 ここでの注意点は、損益計算書の項目は不要であるということです。
 日頃の慣れもあり、バランスシートと損益計算書の両方があれば、どうしても損益計算書に眼が行ってしまいます。そうしますと、バランスシートへ全神経が行かなくなるからです。
 
 月別推移表を作成し、先ず、現金預金、売上債権(受取手形と売掛金)、在庫、仕入債務(支払手形と買掛金)の残高の推移を確認します。
 不正が潜んでいるこれらの勘定に異常な増減がないかを確認する為です。
 
 たとえば、売掛金が増加傾向にあれば、一見すると売上が増加して好ましいと思われますが、実は逆なこともあるから注意が必要です。回収状況が悪いか、不正を行っているから売掛金が増加していることもあるからです。
 もちろん、そのような場合は、売上高の増減傾向と売掛金の増減傾向には関連性があるかどうかを確認します。
 売上高が増加傾向にある場合でも、売上高の増加以上に売掛金残高が急増している場合には、売上の前倒し計上や押し込み販売等架空計上が疑われます。
 
 実は、不正の発見と経営とは表裏一体であり、無関係ではありません。会社の実態を見るためには、損益計算書だけでは無理だということなのです。バランスシートを見てはじめて本当の会社の状態が把握できるのです。
 
 今お話ししました、バランスシートの月次残高推移表は、経営において、必要な情報を提供してくれるすぐれものです。
ぜひ、第58回のコラムを参考にしてください。
 
 最近のことですが、ある上場会社で久々に監査を行いました。目的は「不正摘発」です。
 通常、会計士の監査は、不正発見が目的ではなく、会社側がきちんとした財務情報を作成しているかを確認することの方が主眼になっています。
 ただ、私がもともと会計士になろうとしたのも、不正発見が目的だった為、会計士になった当初は、正直、がっかりしたものです。
 不正発見という発想自体が会計士側になく、会社側も、仕方がないから監査を受けているという感じでした。
 久しぶりに監査の現場に出ましたが、そのような雰囲気は30年近くたっても変わっていなかったため、多少がっかりはしました。
 
 会計士の担当が変わった際は、引き継ぎが当然ありますが、前任の会計士と面談した際、こんなことを言っていたのです。
 社長から、上から目線で見られ、馬鹿にされている感があった、と。
 残念ながら、私が見ても、それは仕方がない感じの会計士でした、というよりそのような会計士が多いのでしょう。
 
 社長に「徹底してやりますから、覚悟をしておいてください」
 この言葉から、不正発見の現場がスタートしました。
 不正摘発の現場については、別の機会にお話ししたいと考えています。
 
 
 
 

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