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採用・法律

第104回 生前贈与は大きく変わる?!

中小企業の新たな法律リスク

賛多弁護士:ところが、令和5年度の税制改正により、「3年以内」が「7年以内」に延長されることになりました。

 

佐藤社長:えっ!7年前までさかのぼるのですか?覚えていられるかな・・・

 

賛多弁護士:トラブルを防ぐためにも、贈与契約書を作成しておくですとか、預金通帳へ記帳をして保管をしておくなどといった対策が、今後はより必要になります。なお、7年前までさかのぼる一方、3年より前の4年間に受けた贈与は、総額100万円までは相続財産に加算しないという措置も設けられましたので、あわせて覚えておいて下さい。

 

佐藤社長:分かりました。その他にはどのような改正があったのですか?

 

賛多弁護士:次に、贈与税に関する改正として、相続時精算課税制度についてご説明します。基本的な部分、ざっくりと言いますと、60歳以上の親から18歳以上の子へ贈与があった場合でも、所定の手続きをすれば、総額2,500万円までは贈与税が課されず、それを超えた部分については一律20%の税率を適用する、という内容に変わりはありません。

 

佐藤社長:選択の手続きをすると暦年贈与へは戻れず、相続税の計算では贈与された金額を相続財産に加算するのですよね。そうしますと、どこが変わるのですか?

 

賛多弁護士:現在は2,500万円の特別控除はあるものの、基礎控除はありません。しかし、令和5年度の税制改正により、相続時精算課税制度でも毎年110万円の基礎控除ができることになりました。

 

佐藤社長:毎年110万円までは暦年贈与と同じく贈与税は課されず、さらに2,500万円までは課税がされないとなれば、相続時精算課税制度を選択しない理由はないですね。

 

賛多弁護士:確かに、贈与者が長生きをすること、毎年110万円までしか贈与をしないことを前提にすれば、相続時精算課税制度を選択するのが有利といえます。ただ、今回創設された110万円の基礎控除が永久に続くのかは不確かですし、贈与者がどのような財産を持っていて何を贈与するのかにより答えは変わってきますから、生前贈与をする前にはぜひ専門家へ相談されることをおすすめします。

 

佐藤社長:贈与もだいぶ複雑になるのですね。さっそく検討をしたいと思います!

 

賛多弁護士:そうそう、どちらの改正も、令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産に係る相続税等について適用されますから、令和5年中の贈与は何も変わりませんので、ご注意下さい。

 

* * *

人は何歳まで生きられるのか、それは神のみぞ知るところです。一方、相続対策を何もしない又は亡くなる直前の短期間で相続対策をして相続を迎えると、ご遺族には財産とともに不安も残ってしまいます。

ですから、元気に体が動き、しっかりとした判断ができる今から、長い時間をかけて相続・贈与のプラニングをすることは、とても大切です。また、財産額、財産の構成、配偶者の有無、相続人及び相続人以外の数など、人によって状況は異なりますから、税金に限らず、各分野の専門家の力を活用することも大切であると考えます。

執筆:鳥飼総合法律事務所 税理士 田坂 尚靖

(注1)暦年贈与:その年1月1日から12月31日までの間における贈与。その贈与を受けた額が110万円以下である場合には、基礎控除額以下であるために贈与税が課税されない。

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