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人間学・古典

第5回 富の本当の活かし方1 財を残すな

経営に活かす“十八史略”

人間の欲望の対象を順番に挙げてきておりますが、酒、美女(異性)ときて次はお金です。

「人の心はお金で買える」と言い切って物議をかもしたIT長者がいましたが、実際のところ、この世のほとんどのモノはお金で買えるわけですし、企業も金さえあれば倒産せずに済みます。というわけで、この世に生きるほとんどの人はお金を欲しがります。これも自然現象に近いといってよいでしょう。

一方で、金を汚いものとして扱う文化も日本には残っています。 よく知りもしない相手に「あなたの給料、いくら?」などと尋ねるのは失礼で、はしたないこと。 あまりに金のことばかり口にしていると嫌われて、人が寄り付かなくなります。

 

  ・お金を集めるのがうまく、しかも金離れもよい

 

 人が好かれるようです。

 中国の場合、給料などお金について人に質問することはそれほど失礼と認識されないようで日本とは感覚が異なりますが、「十八史略」には「江戸っ子」と同じく、金離れがよいことを称える話があります。

前漢の孝宣(こうせん)皇帝のときのこと。

太子の守役(もりやく)の疏廣(そこう)が、兄の子で同じく守役の疏受(そじゅ)と上書して、辞職を願い出ました。 宣帝(せんてい)はこれを許して、それまでの功に対して黄金を下賜。 大臣や朝廷の官吏、昔なじみの友人などが、故郷へ帰る道中の無事を祈って道祖神(どうそしん)を祭り、送別会を都の東門の外で開いたら、見送りをするための者の車が数百台にも及ぶという賑わいでした。

道路で見物していた者たちは口々に、

  「賢人であったからなぁ、お人は」

と言い合ったそうです。

 帰郷後、人は毎日、天子から賜った黄金を売って銭に替え、酒食の用意を整えて、親戚や昔の友人、客人などを招き、共に遊んで楽しみました。子孫のために財産を残さなかったのです。 その理由についてこう述べました。

 

  「すぐれた者が多くの財をもっていればせっかくの志をだめにしてしまうし、愚かな者が多くの財をもっていれば過ちを増すことにつながる。 


 それに富を持つと多くの人から怨まれ易いものだ。私は子孫が過ちを増したり、人から怨まれたりすることを望まないのです」

 

疏廣(そこう)と疏受(そじゅ) 。辞職したときの見送り人の多さから人望のほどがうかがえます。 富をもっても私欲を増幅させることのない、富を使いこなす側の人間だったのです。 巨万の富はすぐれた者をだめにしがちで、愚かな者はさらに愚かにしてしまいます。 子孫にそのまま残すなど、子孫を不幸にする所業なのです。

しかし、そんな富も人のために使えば相手も自分も幸福にしてくれるという性質をあわせ持っています。 人は自分たちが天子からもらった黄金を、親戚や昔の友人、客人などとの遊興に使いました。 人の富の恩恵に浴した人たちは皆、感謝の気持ちを忘れず、人の子孫に何かあったときには救いの手を差し伸べようとするでしょう。 子孫が助けてもらえるような富の使い方をしたということになります。

企業経営に成功すれば、社長の懐も豊かになります。 これを自分の家族、一族のためだけに使ってしまえば、お金の果たす効果はしれたものでしょう。 そうではなく、もっと社会が喜ぶことに使えば、より多くの人からの感謝の気持ちが社長に集まります。 これはまた社長に財をもたらすことになるのです。

中国の思想家、老子はこう教えました。

「聖人は何もためこまない。なにもかも人々に施しつくしながら、自分はますます充実する。なにもかも人々に与えつくしながら、自分はますます豊かになる」

 

  財を残さない人は、失った財以上のものがどんどん入ってきて豊かになる

 

のです。 こういう人こそ真のお金持ちであり、お金を活かせる人なのでしょう。

 
 
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