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人間学・古典

第13回 国の宝とは 威王と恵王の違い

経営に活かす“十八史略”

前回は、主に外部の人に対する姿勢について考えましたが、内部の人に対してはどうすべきでしょうか。

せっかく優秀な人材を獲得できても、集めた端から離れていくのであれば、どれだけ集めても組織力は伸びません。

ある学習塾では、生徒を集めることに躍起となっていました。春先には優秀校への合格実績を売り物にしたチラシを年間通して打ち続け、学校の成績のよい中学生の個人情報を集めては直に電話営業をして獲得。さらに、入塾した生徒のフォローをこまめに行い、対塾を防止した結果、生徒数はどんどん伸びていったのです。

しかし、生徒数が伸びたのは宣伝の力だけではありませんでした。授業の質を高めたことが生徒の学力を伸ばし、進学実績の高さにもつながったのです。一人ひとりの講師の授業力をいかに高めるかということに注力していました。

「十八史略」に以下の話があります。

戦国時代、斉(せい)の威(い)王が魏(ぎ)の恵(けい)王と共に城外で狩をしたときのこと。恵王が威王に向かって尋ねました。

 「あなたの国には何か宝がありますか」

 「いいえ、何もありません」

すると恵王は、

 「私の国は小さい国ではありますが、それでも直径一寸ばかりの宝玉で、車の前後12台の距離を明るくできるものが10個あります」と言いました。これに対して威王は、

 「私の宝はあなたのとは違っております。

私の臣下に檀子(たんし)という者がおりますが、この檀子に南城(なんじょう)の地を守らせたところ、南隣りの楚(そ)は敬遠して、わが泗(し)水のほとりに攻め入ろうとしません。そのうえ、12の諸侯が来朝するようになったのです。

また、肦子(はんし)という者がおりますが、これに高唐(こうとう)の地を守らせたところ、西隣りの趙(ちょう)は黄河のわが漁場を荒らさなくなりました。

また、黔夫(きんぷ)という者がおりますが、この黔夫に徐(じょ)州を守らせたところ、北隣りの燕(えん)はわが北門へ来て、西隣りの趙はわが西門へ来て、わが国から征伐されないように祈るようになりました。

さらにまた、種首(しょうしゅ)という者がおりますが、これに盗賊の取り締まりをさせたところ、道に落し物があっても拾う者がいなくなりました。

これら4人の臣下は、まさに千里の距離を照らすでありましょう。わずか車の前後12台を照らすどころではありません」

と言ったところ、恵王は恥ずかしくて赤面してしまいました。

 この威王のもとには、天才軍師、孫臏(そんぴん)(「孫子の兵法」の著者、孫武の子孫)もいました。人材を宝と考え、積極的に諫言も受け入れて国力を増した王だったのです。

企業においても、

 

 自社を発展させる原動力は従業員であり、この人たちこそ宝である

 

と言えるのですが、従業員は単なる道具だと思い違いをしている社長がいらっしゃいます。よくよく気をつけたいものです。

 
 
 
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