1970年代のオイルショックでは、ガソリン・灯油の欠乏や消えたトイレットペーパーなど物不足と物価高騰という事態が起きました。その再来にもなりかねない危機が現在中東で進行しています。経営や資産への影響を冷静に分析しておかねばなりません。
ご承知のようにイランの核開発疑惑問題は、イランの主張する平和利用目的と国際社会の核兵器開発疑惑が真っ向から衝突、欧米による経済制裁措置へと発展しました。度重なるIAEAによる査察や国連安保理決議にもかかわらず、イランの核開発計画は進行し事態は混沌としています。
一方、イランの敵対国であるイスラエルは、国家と民族の生存のためにこの問題には極めて鋭敏に反応し、武力攻撃も辞さない姿勢を強めています。歴史的にもイスラエルは、1981年6月にイラクが建設中のオシラク原発を爆撃して徹底的に破壊した実行力があるので、作戦計画は既に出来ているのでしょう。
イランの核開発は平和利用目的で、国際社会が容認できるものに早く終息させねばなりませんが、その見通しが立たない限りイラン問題は、イスラエルによる軍事行動へとエスカレートし、イランの反撃とホルムズ海峡封鎖という最悪の事態になる懸念が高まっています。
日本のエネルギー自給率は原発が止まった現在4%に過ぎず、特に中東に多くを依存しています。オイルショック以降、一旦低下させた中東地域への石油依存度を油断して高めてしまったので、中東動乱が1ヶ月ほど継続しただけでも大規模停電になりかねません。国内の石油備蓄は200日分あっても、火力発電用のLNG備蓄は約3週間分しかないからです。
ホルムズ海峡が現実に封鎖されれば世界経済の大混乱は避けがたく、さらに途上国など脆弱な地域が打撃を受けます。核兵器開発疑惑問題は、欧州債務問題を遥かに上回る重大事態発生の可能性を抱えています。年初から回復基調にある金融市場と相場観に冷水を浴びせる話ではありますが、いまそこにある危機を冷静に認識して経営計画と資産運用を考えていきましょう。