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経済・株式・資産

第89回「配当も株式投資の魅力」

会社と社長のための資産管理講座

上場企業の2016年3月期の配当金総額が3年連続で過去最高額を更新し、また、9月中間期の終値ベースの予想配当利回りは、東証1部全銘柄の加重平均で2.13%。一方で、長期金利の指標になる新発10年物国債利回りは、マイナス金利の影響を受けて9月末日現在-0.085%まで低下した。日本株式と日本国債の利回り差が拡大している。
 
東京株式市場は、近年特に外国人投資家の動向に左右されてきた。外国人投資家には、ヘッジファンドのように短期的視点だけで値上り益を追求する株主がいるが、海外の年金基金や政府系ソブリンファンドなど、純投資を目的に長期的視点から運用する株主も増加してきた。これら長期投資家の要求の一つが、配当金の増額や自社株買いなど「株主への利益還元政策の強化」であり、日本企業の経営に大きな影響を及ぼしている。
 
配当利回りに関しては、欧米企業より日本企業が歴史的にかなり低かったので、1990年代までの株式投資は、ほとんどが値上り益目的だったと言っても過言ではない。しかし、株主還元が重視される現在では、『配当利回り』の向上により、キャピタルゲインもインカムゲインも合計して、総合的に収益性を判断することが合理的になっている。
 
株式投資の収益 = キャピタルゲイン + インカムゲイン
           (値上り益)       (配当金)
 
東証1部全銘柄の予想配当利回りの加重平均は約2%だが、個別企業には3%から4%を超えるものもある。配当は業績により増減するが株主還元を重視する時代なので、多少の業績変化に影響されない『安定配当』を目指す企業が増えている。仮に年3%の配当金をNISA口座(非課税口座)で受け取れば、手取額も3%の利回り。これが10年間継続すれば、投資額の30%は配当金で回収できて、値上り益だけが目的の運用と比べて安定性が高まる。
 
「税引後純利益の何%を配当するか」を示す指標として注目されるのが『配当性向』。企業によってまちまちで、約20%から30%とするケースが多い。一般的に成長産業と見なされる業界、ITや先端技術関連業界などは設備投資の資金需要が大きいので配当利回りは低位の場合が多い。反対に成熟産業と考えられる総合商社や医薬品業界などには、高配当企業が比較的多くあり、これら企業に焦点を当てた高配当株ファンドもある。
 
いまは高配当でも、今後の業績の悪化⇒将来の減配により配当利回りが低下することは考えられる。例えば、総合商社や石油鉱物資源の業界は、世界的な資源価格の下落により、開発投資で巨額の減損処理を迫られた経験もあり、減配懸念がないとはいえない。医薬品業界も、特許切れによる後発薬シェアの上昇⇒利益率の悪化や新薬開発費の負担増加⇒業績悪化から減配というリスクに注意が必要だ。
 
株式市場と株価の将来予測はとても難しいものだが、長年にわたり社会的責任を重視する堅実経営と安定配当を続けた企業の配当に着目した投資は、値上り益だけに依存する投資と比べて、不確実性が限定される効果が期待できるだろう。
                                      以上

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