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人事・労務

第93話 有期から無期労働契約への転換にそなえて

「賃金の誤解」

賃金管理研究所 所長 弥富拓海
http://www.chingin.jp
 
 無期転換ルールとは、労働契約法に基づき、平成25年4月1日以後の有期労働契約が、同一の使用者との間で5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。
 
 今回は改正労働契約法、特に有期労働契約者の無期労働契約への転換の問題を再度取り上げてみたいと思います。
 
 有期労働契約は、パート社員、アルバイト、準社員型契約社員、嘱託社員、期間労働者をはじめ、いわゆる正社員以外の労働形態に見られる労働契約の形式であり、こうした有期雇用社員の約3割が、通算5年を超えて労働契約を反復更新している実態があります。
 
 今回の無期転換ルールの適用となる通算契約期間は、改正労働契約法の施行日である平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約からカウントし、5年目にあたる平成30年4月から無期転換申込権が発生します。ただし、施行日以前に開始した有期労働は、通算契約期間の算定の対象となりません。また1年単位の雇用で、「6か月」の無契約期間(インターバル)がある場合、この期間が「クーリング期間」として扱われ、それ以前の契約期間は通算対象から除外されます。
 
 雇用の安定性に欠ける有期労働契約から無期労働契約に転換することで、労働者は安定的かつ意欲的に働くことができ、企業にとって意欲と能力のある労働力を安定的に・確保しやすくなるといったメリットが強調されています。
 
 しかし実際には企業が契約更新するかどうかの重要な判断を、勤続5年目のパート社員が無期転換を希望した時点で放棄することに他ならないのです。無期雇用への転換希望を聞いてからでは後の祭りです。「雇止めできない」と慌てることのないように早めに備えておくべきでしょう。また無期転換後のパート社員については契約更新時の評価に相当する「仕事の質と量」の勤務査定を放棄する訳にはいきません。
 
 平成30年には、新しい雇用形態として定年の日まで短時間勤務できるパート(補助業務)社員が誕生します。おおいに歓迎する労働集約型の職場もあれば、無期雇用の時給パート(補助業務)社員の増加は望まない職場もあります。それぞれの企業が対応策を検討し、作業変更、配置換え等、転換後のルール(別段の定め)を示しておくことが必要となります。
 
 無期転換後のパート社員の労働条件については別段の定めがない限り、有期雇用時と契約期間以外は変更しないとする転換ルールゆえに、パートとしての仕事が続きます。せっかく無期転換しても時給パート社員の立場も給料も変わらないとすれば、パート社員同士でも不公平感が生まれ、職場の一体感を損なう等の問題が発生するおそれもあります。また無期転換パート社員と正社員の間にも隙間風が想像できます。
 
 いずれにしても重大な変更です。ヤル気あるパート社員には転換後も、長くその仕事力を磨き、実力を発揮できる適性配置が可能なように無期転換パート社員の就業規則、諸規程の整備を進め、人材活用の見地から慎重かつ周到な環境整備を心掛けてください。

 

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