「経済はデフレ脱却の方向に向かっている。産業界、労働界も大胆に取り組んでほしい」との安倍総理の強い要請から始まった2014春季労使交渉。
日本経団連の「ここ数年と異なる対応も選択肢となりうる」とする指針を受け止める形で、賃金相場形成のリード役となる大手企業が集中回答日(3月12日)にベースアップを回答しました。
業績絶好調のトヨタ自動車が平均で2,700円のベースアップ(6年ぶりのベア)と一時金6.8カ月分の満額回答を発表。加えて一般期間従業員の日給についても200円引き上げることを発表しました。この回答を皮切りに、日産自動車が3,500円、ホンダが2,200円、富士重工業、三菱自動車は2,000円と発表。軽自動車税引き上げで先行き不透明としベアをしぶっていたスズキとダイハツ工業も一時金は要求通り5.5カ月分とし、賃金改善分の原資月額800円を回答しました。また好調な企業ばかりとはいえない電機ですが、パナソニック、日立、東芝、三菱電機、富士通、NECの主要6社と沖電気工業、富士電機、明電舎、安川電機が統一交渉に参加、ベア2,000円を回答しました。
また、中小企業労働組合が多く加盟する産業別労組JAMは24日までの春闘の集計として、組合員300人未満の192労組の妥結額は1,240円(加重平均)だったと発表しています。
4月からの消費増税が迫る2014年の春闘、大企業を中心に、出せる企業は安倍政権の要請に答える形で2,000円を超えるベアを表明。先行き楽観視できない企業であっても、中小企業を含めて黒字決算の企業であれば1,000円ほどのベアは必要といった主張も展開されています。
最後に相談に来られた社長の話を紹介しましょう。「我社は今年、1,000円の定額ベアを実施したいと思います」。理由を伺うと、「我社の従業員は50名であり、過去10年ほどベアはできませんでした。そのため現在の給与水準は他社に比べて高いとは言えません。今年は守りから攻めに移行すべき年であり、若年層の給与を改善したい。そのためには定額加給の増額変更がベストだと判断しました。一人1,000円のベアは社員50名で月5万円の増となりますが、好循環を実現するための投資として積極的に考えたいのです。」と決意の程を話してくれました。ひとつの選択肢として前向きに話を伺いました。