上から順に「+1,+2,+3,0,-1,-2,-3」だった評価基準を
「+7,+6,+5,+4,+3,+2,+1」と 改めたところ、それだけで社員のやる気が増した企業があるのだという。
「減点主義」から「加点主義」に変更したという側面はあるにせよ、それまで「-3」の評価だった 人は「+1」に、
「-2」の人は「+2」にといった具合に、ポイントをずらしただけで、そうなったそうである。
これは、心理学者の石川弘義先生が紹介された事で、氏はこの事実をこう解説している。
“生存の欲求に始まって自尊の欲求、あるいは自己実現の欲求、創作の欲求と、人間の欲求は、ちょうど山を登るように
高い所に登ってゆくというのがマズローの説なのだが、マズローのいう自尊の欲求、つまり自尊心を高めたい、誇示したい
という欲求に、この減点法から加点法への切り換えはまったく見事に対応していたということなのだろう…”
氏の解説を待つまでもなく、自尊心ということでいえば、人間誰しも叱られるよりは、ほめられた方がいいに決まっている。
ほめられることによって自尊心はくすぐられるものだ。
このことは、部下にしても管理職にしても同じである。
それゆえ、「8ほめ、2叱り」とか「8ほめ、2注意」といったスローガンに託し、部下であったら上司をほめ ましょう、
上司であったら部下をほめましょうと、ここそこでほめることの大切さを力説しているわけだ。
とはいえ、実際には叱ったり、注意を与えることが必要な場面も出てくる。
部下に問題があった時、上司の態度としては、「何も言わず、無視する」「注意する」「叱る」「怒る」「クビにする」という
5つの態度が考えられる。この中で、最初と最後の「無視する」「クビにする」は論外として、「注意する」「叱る」「怒る」
の間のバランスを取ることが大切になるが、 4つほどポイントを上げておこう。
1,8ほめ、2叱り
部下に対しては、ほめることに8割のウエイトを置き、叱ることは2割にとどめること。これが「叱る」事の前提だ。
2,「ヒト」を叱らず、「コト」を叱る
どんな状況でも人格そのものをけなせば逆効果となる。
「お前が悪い」ではなく、「お前がやった仕事が悪い」というように、「ヒ ト」ではなく「コト」を叱ることで客観性が維持できる。
3,叱ったあとはフォローする
打たれ強いか弱いかといったような、相手の個性を考えたうえで叱る。そして、決してそのままにはしておかないこと。
4,怒る前に叱る、叱る前に注意する
「怒る」は感情そのもの。
「叱る」「注意」になるにしたがって、感情が抑えられ、逆に論理性・客観性が強くなる。
怒ることを全否定するわけではないが、注意や叱りでとどめたい。
新 将命