「上手な話し方」
◆仕事を円滑にすすめる「コミュニケーションのスキル」◆
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- 第75回「上手な話し方」 話すことのメリット
前回の上手な話し方では、「この方はどんなお話をするのだろうか、聞かせていただきましょう」というスイッチを相手にまず入れてもらうためにしていただきたいことを述べました。
では、今回は話をするあなたにとって「話をするメリット」を考えましょう。「話をする」ことになったら、まず、「何を話すか」に注意が100%向いてしまいがちです。しかしその前にメリットをきちんと理解すると、人前で話をする時に多くの方が感じる「話ベタ」や「あがる」というマイナスをうまくフォローすることにもつながります。
「話す」ことのメリットは、話すことで自分の考えが整理できる、さらにその考えを述べることで自分の考えが分かっているのか、よーく分かっているのかが明瞭になることです。そして話すことが、よーく分かっていないと「話」はできないことに気づきます。
だいぶ前になりますが、全国展開をしているある会社が、新しい商品の販売に営業部総出で顧客の個別訪問をすることになりました。そこでこの会社から私に研修のご依頼をいただきました。研修にお伺うすると受講者の平均年齢は50代くらいでした。もちろん前回述べたように、身だしなみや所作についてもふれました。すでに十分仕事上でも人生も経験を生まれていらっしゃる方々でしたが、前に立って一人ずつ発表を始めていただくと数人の方の膝がスラックスの上からでもガクガク震えているのがわかりました。新しい商品の説明がなめらかに進みません。これではせっかく「良い商品です!」と、お客様にお勧めしても、相手に買う気持ちになっていただく確率は低くなってしまいます。
人前に立つという条件の中で話をする時には、自分の考えがしっかり整理されていないと相手の心に届く話し方はできません。自宅で壁に向かって練習をしたり、眼を閉じて練習をして良くできたとします。ところが人前で話すときは何が起こるかわかりません。新人インストラクターの頃の私を振り返っても、一人の方の頭が少し動いただけでも気をとられてしまったものです。些細な条件の違いに思考が停止してしまいます。すると、さらに「あせる」という負のスパイラルが発生してしまいます。なんとか踏ん張って話し終えてもそれでは自分がただ一方的に話しただけにとどまってしまいます。残念ながら、決して相手の心に届いていないレベルの話し方になってしまうのですね。
活字を読んで理解した事を、自分の身体にとりいれて咀嚼し、整理して自分の言葉で伝えられるレベルに仕上げたとき気持ちに余裕ができます。ただ私の経験から申し上げると、話すという場数を踏むことも、もうひとつの角度として大切です。ですから、どうぞ話すチャンスはひるむことなく自ら進んで一回でも多くとらえて下さい。
話し方講座の中で人前で一人に数回以上も話をしていただくと、それだけでも進歩の様子が目に見えるように感じます。もちろん、個人差はありますが5回目くらいになるとかなり差が縮まります。
「自分の考えが漠然としていた状態での発表」→「かなり整理された発表」→「よーく整理された発表」と、回を重ねるたびにステップアップします。そのような場でひとりひとりが確実に進歩なさるのを拝見すると、指導させていただく私としても大変嬉しい一日になります。
ぜひ、何を話すかの前に、話す事のメリットを押さえることから始めてみましょう。