このレコード回帰とシティポップブーム、そしてFACE Records NYCの成功から学べるビジネスヒントを考えてみた。
1. ニッチ市場の掛け合わせ:
アナログレコードやシティポップのような特定のジャンルに特化することで、コアなファン層を獲得できる。また、一時期のブームではなく、それを本当に愛する人たちが集まることから、そのビジネスと共に市場を育てることができる。
NYには他にも中古レコード店は沢山あり、日本のレコードの取り扱いのある店も勿論存在しているけれど、保持している日本の中古レコードの数はFACE Recordが圧倒的だとのこと。それでも、存在している数の絶対数が少ないのが日本の中古レコード、中でも状態の良いものは少ない為、凝り性なレコード音楽ファンが、セレンディピティを求めてFACE Recordsに足繁く通いたくなるポイントが存在している。
2. コミュニティ形成:
単なる商品販売にとどまらず、レコードがある空間に音楽とレコードが好きな人が集まり、SNSを活用して顧客同士の交流の機会を提供することで、店と顧客同士のロイヤルティを高めることができる。
その例が添付の動画。筆者がお店に伺った際、義父のアルバムが店内でかかっており、それを気に入り(初めて聞いたとのこと)購入してくださった方と記念に撮った写真を、ジェネラルマネージャーの間宮さんがすぐにInstagramのstoriesに投稿してくださった。それがきっかけで、そのお客さんとInstagramで繋がり、楽しいメッセージのやり取りができたのだ。
3. オンラインとオフラインの融合:
オンラインショップと実店舗の両方を活用し、ポテンシャルのある顧客層にアプローチする。オンラインのストリーミングサービスでシティポップに出会い興味を持った人が、実店舗に来てアナログレコードを探す楽しみや、遠方の方の場合はオンラインで購入もできるが、「NYで尋ねてみたい場所」リストの一つに挙げておき、旅行でNYに来た時に訪問するという楽しみも提供できている。
前述の筆者と一緒に写真に写ってくださった方は、他州からNYに旅行でいらしており、「NYに行ったら、絶対に(FACE Records NYCに)来たいと思っていたんです」とおっしゃっていた。
やり取りしたメッセージの中に「旅が終わって自宅に戻った後、今日購入したこのレコードに針を落とすことを、今からワクワクしているんだ」と伝えてくださった。
この「ワクワクを育てるちょっとした辛抱」の感覚も、楽しみを増幅させる。こんな感覚も素敵なショッピング・エクスペリエンスとして提供できている点も非常に重要。
レコード回帰とシティポップブームの波に乗り、ニューヨークでFACE Records NYCのようなニッチでディープな成功事例が出てきた。
彼らのビジネス背景からは、業種を問わず参考になるヒントがあり、新たなビジネスチャンスに気づくことができる。そして、古き良きものを良い状態で今の時代にまで保ち、その時代を知らないからこそ「新鮮に感じる」、一層「素敵だと憧れる」、そんな人々に繋いでいることは、サステナブルの最も理想的かつ美しい形と言える。今年30周年となるFACE Recordsが、NYに開いた海外一号店でも、しっかりそれを守っていらっしゃることこそが、ブランド確立=顧客からの信頼確立に繋がっているのは明らかだ。新しくブランドを作るのは本当に時間と労力がかかる。しかし、もっと大事なのは出来上がったブランドを守り確立していく継続力だ。
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