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税務・会計

第16号 魔法のバランスシート

会社を守り抜くための緊急対策

 医療法人ブレイングループ 理事長 長谷川嘉哉氏から、拙著『会社と社長個人のバランスシートを合算する連結バランスシート経営』の推薦文をいただきました。
 また、長谷川氏のブログに、拙著に関するご意見がありました。
 その中に、『会社を犠牲にして、個人だけを豊かにする経営者は論外です。少し儲かると、個人で贅沢をする経営者がいます。しかし、連結バランスシートが債務超過になっていれば、何かあるとすぐに破たんする危険があります。経営とは、地震が起きて1年間売上がゼロでも生き残る必要があるのです。』という箇所があります。

◆事業を休めるバランスシート
 経営とは、地震がおきて1年間売上がゼロでも生き残る必要がある・・・
 たとえ会社のバランスシートが地震等何かの原因で悪くなったとしても、連結バランスシートがよければ、会社は生き残ることができます。
 取締役でも社長とそれ以外の人では、様々な点で異なるものです。ナンバー1である社長の報酬は、社長以外の給料を支払った後、資金があれば支給されます。資金がない場合は当然、未払いになります。中小企業のトップの方の中には、報酬の未払いの方も多いのではないでしょうか。
 これに対して、社長以外は、基本的には、毎月、必ず、決まった日に給料をもらうことになります。たとえ、赤字であっても、給料をもらえるわけです。なぜなら、社長として一番避けたいことは、やはり給料の遅配だからです。
 売り上げ減、即、社長個人の生活費がなくなります。ですから、たとえ、新聞を読んでいても、トイレに入っていても、落ち着きません。
 このような会社のバランスシートは、間違いなく悲劇のバランスシートになっています。バランスシートに、現金預金がなく、資金化できる資産もあまりない会社です。
 しかし、毎月、必ず、支払いは来ます。バランスシートに未払金、買掛金、預り金そして借入金といった過去のつけが残っています。
 これらの支払いは、何ら、収益を生む支払いではありません。ですから、支払うこと自体、とても躊躇してしまいます。
 このような時、いかにして魔法のバランスシート、この場合ですと、少しはゆっくりと休めるバランスシートにしていくかです。
 この場合も、手順というものがありますが、現実を無視して、少し、夢のようなバランスシートを考えてみます。
 現実を無視とお話をしたのは、絶対に無視はできないからです。気持ちの上で無視でもしなければ、夢のようなバランスシートを描くことができないためです。
■3か月分の運転資金が手元にあるバランスシート。
 通常、支払いサイトが3か月程度ですから、3か月分の現金預金があれば、落ち着いていられます。会社のバランスシートでこの状態がベストですが、連結バランスシートであってもOKです。
■後ろ向きの支払いがないバランスシート。
 後ろ向きという意味は、買掛金計上の原因となった仕入代金について、この仕入に対応する売上がすでに計上され、その代金の回収が完了しているにも関わらず、その回収金額が他の支払いに回され、まだ、買掛金が残っている場合、この買掛金の支払いのことを言います。この代金の支払いは、もはや将来の収入を生むものではありません。
 このような状態を先ずイメージしたうえで1年後から3年後までの目標バランスシートを構築し、現時点のバランスシートからどのようにすれば目標となるバランスシートを構築できるかを一度でいいですから考えてみるべきです。

◆投資してもらえるバランスシート
 「申し訳ありませんが、御社への投資はできません」
 「どうしてですか?」
 私が投資銀行業務を行っていた時の会話です。お断りをした理由ですが、事業計画の中には、夢を描いた素晴らしい予想の損益計算書はありましたが、会社経営の土台である予想のバランスシートがなかったためです。
 投資をお断りした相手の経営者にはどうしてもこの意味が理解できなかったようです。
 最後には逆切れまでされる始末になったのを記憶しています。先ほどの会話の続きです。
 「確かに御社の事業内容と計画は素晴らしいと思いますが、とても大切なものが欠如しています」
 「それは何でしょうか」
 「事業プランを作られた5年間分の毎期の予想のバランスシートです」
 「どうしてバランスシートが必要なのですか。この事業計画はプロに作成してもらったんですよ」
 「プロに作成してもらったいということですが、その方はプロではないのでしょう。予想のバランスシートが必要かわかりませんか?はっきりいってそれだけで投資は駄目ということになります」
 もちろん予想のバランスシートの必要性はお話をしましたが、残念ながら最後まで理解してもらえませんでした。こういったことは結構、多いのです。
 これまでは良かったのかもしれません。今後はそうはいきません。投資リスクがあまりにも大きいからです。
 実は、先ほどの会話の前に、この経営者と次のようなやり取りがありました。
 投資を依頼する前に銀行等に資金調達を頼みに行きましたかといった質問をしてみました。すると、返答はこうです。どうせ銀行にいっても貸してくれないし、時間もかかるし、それに、もし借りたとしても資金的に不十分だと思うから一度も銀行には足を運んでいないというのです。
 経営者には、資金調達能力が必要不可欠です。銀行にも相談に行かないで、投資を依頼する人間の感覚が理解できません。
 投資は事業ではなく人にするものという考えがあります。事業は失敗することもありますが、必ず何かをやり遂げる人間はたとえ一度や二度、事業に失敗したとしても、必ず這い上がってくるからです。だからこのような人に投資をすれば、いつかは成功するという考えです。
 投資を受けようとする人は、将来の財産のイメージはつけているものです。つまり会社の価値です。
 会社の価値、つまり財産は、資産から負債を差し引いて計算されます。5年後に財産を10億円にする。その際、総資産は25億で負債は15億。そして上場することで負債を減少させ、更に財産を増大させる・・・
 少しアバウトではありますが、このくらいのイメージは持っているものです。
 経営の土台はバランスシートです。経営は結果を求められます。その結果は、バランスシートなのです。その結果をイメージできずに経営はできません。だから、予想のバランスシートがない以上、投資は困難となってきます。
 投資は融資と違い担保等の保全はありません。リスクが高いかわりとしてリターンは大きくなります。投資の資金がファンドであれば、投資家から資金を任されて運用しているため、安易な投資による失敗は許されません。だから、融資より厳しくなってきます。もちろん投資を行う側も、一攫千金を狙っているため、多少のことは目を瞑ることもあります。
 しかし、予想のバランスシートもなく、その理解もなければ投資は投機に代わることになります。
 ちなみに先ほどの会社は、環境関連事業で、1年目は売上500万円、損失1億円。2年目はなんと売上500億円、3年目の売上は1000億円となっていました。それを真顔で話すのです。予想の売上などは希望的観測で何とでも書けます。
 なぜなら、損益計算書だけであれば、単年度だけを考えればいいからです。単純な話、損益は繰り越されません。まるで国の会計を見るようです。
 しかし、バランスシートを予想するには、支払いサイト、在庫回転期間、売上債権回収期間等を考慮し、キャッシュフローも考えなければなりません。また、単年度では作成できません。バランスシートの項目は次期に繰り越されるからです。
 損益計算書のみであれば、前年度は前年度として勝手に次年度の数字を作ることができます。先ほどのように、3年後に売上1000億円と簡単に数字を作れるのです。
 しかし、バランスシートは前期からの繰り越しを無視して作成はできません。
 結果として、事業計画策定に予想バランスシートがなければ、損益計算書の数値の根拠がないことになります。
 バランスシートの裏付けのない損益計算書は信用ゼロなのです。
 ちなみにこの会社の事業計画のように、急激な売り上げ増加は資金不足をもたらすことになります。通常、在庫や売掛金が増加するためです。もちろん、在庫のない商売もあるとは思いますが、これはまれなケースです。
 だから、急激な売り上げ増加の事業計画を策定するならば、資金不足にならない理由が明確に必要になってくるのです。それがバランスシートとキャッシュフロー計算書(資金収支)の存在なのです。
 次号では、急激な売上の落とし穴についてお話します。

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