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税務・会計

第28号 社長の敵は身近にいるかもしれない

会社を守り抜くための緊急対策

 内部告発が後を絶ちません。インターネットにいたずら写真や動画を投稿されて窮地に陥る会社も出てきました。
 中小企業は誰も守ってくれません。もしかしたら、社員も・・・
 うちは大丈夫と思っている会社が一番、危ないものです。

◆社員の9割は社長を理解していない
 とても残念なことですが、これは事実です(9割は少しオーバーかもしれませんが)。
 ところで、人の話を聞くよりも、話をする方が、気分がいいものです。話が大好きな売れない営業マンが一番悩むところです。見込み客に一生懸命お話をしていますと、話し手はとても充実感を味わうことができます。自分自身では、営業は成功していると思うでしょうが、客は、結局、買ってはくれません。
 見込み客は、営業マンの話を聞くだけなのです。
 話しを聞く方が、話をするより、何十倍も疲れます。営業マンの話を聞くことに疲れ、仕方なく何かを買うことはあるでしょうが、そんなことは続きません。
 売れる営業マンは、見込み客の話を聞きます。話をしてもらえるような環境を構築していきます。そのための質問を用意しています。そうすれば、見込み客が話す割合が多くなり、気分もよくなります。結果は明らかでしょう。
 客商売も同じことです。お客様が、何もしゃべらずにお店に入り店内でも何もしゃべらず店を後にした場合と、入口で何か言葉を発し店内でも何か話をした場合とでは、お客様の気持ちがかなり違うものです。客単価が増加することも期待できます。
 最近では、カフェ等でも「いらっしゃいませ」の代わりに、朝なら、「おはようございます」、昼なら、「こんにちは」と、お客様に声をかけるようにしているところが増えてきました。
 いらっしゃいませと言われても、お客様は返答できませんが、おはようございますと言われれば、つい、おはよう!ということもあります。この、一言がお客様の気分をとてもよくしてくれます。
 しかし、物事には限度があるもので、お客様にしゃべってもらおうとして、ついつい話し込むのはどうかと思います。
 また、お客はあまり馴れ馴れしくしてほしくないもので、その加減が企業努力と差別化になってきます。
 お店の人が話しかけなくても、何らかの仕掛けをして、お客様に話をしてもらうようにすることも大切です。
 ここまでお話ししますと、社長は何か思い当たることがあるのではないでしょうか。
 よく部下と酒を飲みに行き、自分はコミュニケーションがとれていると思っていたのですが、よくよく振り返ってみれば、ほとんど自分だけが話をしていたのではありませんか。社長の話を聞かされている部下は、うんざりしているかもしれません。
 そしてだんだん、社長から離れていき、社長のことを理解しなくなります。
 これは社長の責任です。
 このことに気がついていない社長の9割は、社員が自分のことを理解していると思っています。
 本テーマとは真逆です。しかし、これが真実なのです。この社長と社員の相互の理解のズレが会社を弱くしていることにもつながるのです。
 社長がどんなに真剣に経営をしていても、社員の心は社長のベクトルとは違っていくのです。社長からすれば、一番ショッキングなことでしょう。
 うちの社員は違うと話をしている社長ほど、その傾向があるかもしれません。逆に、自分は社員から理解されていないと謙虚な姿勢の社長ほど、案外、社員からの理解があるものですし、社員の話を聞いています。

◆こうして社内に敵をつくってしまう
 経営者セミナーを受講し、社長業の本を読み、それをそのまま、まねする、いわゆる経営ごっこをしている人は、社員からの信頼を得られていないものです。
 セミナーで勉強をしていても、経営ごっこをしていては、社員の心をつかむことはできません。
 経営ごっこ。少し言葉がよくないかもしれませんが、私にもその経験があります。
 社長はこうすべきだ・・・と人から聞き、本を読んで、その通り実践しても、なぜ、そのようなことをするのかといった核心を考えずに実行しますと、社員は「また、始まった」になります。
 経営理念を作成する場面において、他社の経営理念を参考にするのはいいのですが、中には、本当の意味もわからず、そのまま真似をしている社長もいます。
 よくある「地域社会に貢献する」というフレーズも、何で貢献していくのか、社長一人ひとり意味が異なっているはずです。
 商品を提供することで貢献することだけでなく、地域の教育に役立つ、環境に役立つ等、様々なことが考えられます。
 取り扱っている商材は手段にすぎません。それ自体が目的となることももちろんあるでしょうが、その商材を手段として、たとえば、人を教育したり、環境保全をしたりしていきます。
 地域社会に貢献することを経営理念に入れないで、「社員に貢献する」と書いている会社もあります。社員は地域に住んでいますので、目の前の社員に貢献することが、ひいては地域社会に貢献すると考えているのです。
 漠然としている地域社会より、目の前にいる社員にどのように貢献していくかを考えた方がより現実的ですし行動しやすいはずです。
 理念は全社員に浸透させなければならないとセミナーで聞き、社長が朝礼で毎日、経営理念を自らが言い、また、社員に順番に言わせている会社もありますが、ただ、漠然と言っているだけであり、その意味を考えずに終わっていることもあるのです。それでも毎日続けることが大切だと社長は満足しています。
 理念に信用信頼や安心安全という言葉を使っていても、信用と信頼の違いや、安心と安全の違いも理解していないことも多く、また、どうすれば信用信頼につながるかの活動を社内で行っていないこともあります。
 行動指針のようなものを構築して社員にわたし、ちゃんと読んでいるかと言っているだけなのです。
 これでは、社員は社長のことを理解できませんし、社長自ら、社内に敵をつくっているようなものです。

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