AIを持ったコンピュータにできること、できないこと
そこで、今一度「AIを持ったコンピュータにできることと、できないことは何か?」について考えてみましょう。
そのヒントが、書評家で著名な土井英司氏の『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』(サンマーク出版)に掲載されています。
「人間には原因が作れる。しかし、コンピュータには原因を作ることはできない。原因が何かを探ることもできない。だから、コンピュータなど敵ではない。未来を作れるのは人間だけなのだ」
どういうことか。例えば、ヘルシア緑茶を題材に考えてみましょう。
この緑茶は花王の製品です。アサヒやキリンの製品ではありません。
マーケティングが専門の中京大学の坂田隆文教授は、「ヘルシアは飲料メーカーには創れない」と言います。
なぜなら、ヘルシアが不味いからです。
飲料メーカーは、美味しいものを創るのが仕事です。アサヒは「うまい」を、キリンは「おしいさ」を追求しています。
そのため社内で誰かが、脂肪を燃焼させる茶カテキン満載で、飲んだら痩せる効果にある飲料を提案すると「そんな不味いものは売れない」と、却下されてしまうのです。
飲料メーカーには過去の販売データの蓄積があります。
コンビニのPOSデータの蓄積があります。
コンピュータを使って、このビッグデータを解析します。
すると何が出てくるか。
「美味しいものが売れた」という事実は出てきます。
「どんな味が誰に好まれるのか」も出てきます。
しかし、「不味いものが売れた」という事実は出てきません。
つまり、コンピュータは、過去の売れ筋を分析して「この味なら売れる」という判定ができても、今まで見たことも聴いたこともないような味のものを「ダイエット志向が強い今日には受けるかも!」と気づき、茶カテキン満載の緑茶を売り出そう!とは着想できないのです。
このことは、売り方を考える時も同じです。
仮にあなたの会社が、青汁を開発したとします。
そして、過去のビッグデータを分析し、どんなCMで訴求すれば売上げが伸びるのかを探ったとします。
しかし、どれだけ解析しても、悪役俳優が渋い顔で「うーん、不味い」というあの大ヒットしたプロモーションにはたどり着けないでしょう。
過去に「不味い」と言って飲料を売った事例がないからです。
このようにコンピュータにできるのは、ひとつの結果から次の結果を類推することだけであって、画期的な成果を生み出す原因を作ることではないのです。