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戦略・戦術

第66回 日本型中小企業の生産性の上げ方

継続経営 百話百行

(1) なぜ生産性か?

1) 生産性がなぜ日本で注目されるようになった?

政府が協議会を立ち上げた。

2017年5月 生産性向上国民運動推進協議会立ち上げ
        「人材育成と生産性向上」
経済を活性化するのに、生産性を上げることが不可欠と
発言し、一気に注目を浴びる。

2017年9月 安倍首相 衆参解散で「生産性革命」
生産性が必要な理由は、
日本が急激に
人口減少になってきた。
それも、生産者人口と呼ばれる
15歳から64歳のいわゆる働く世代の人口が減少し
「労働力減少」になり
「働き方改革」が叫ばれるようになった。
つまり、
働いてくれる人の人口が減ってきたから
1人当たりの生産性を上げないと
今までのサービス、製品が提供できなくなる。
それで、1人当たり、働く時間を増やすと
働き過ぎになってしまうので
生産性が叫ばれている。

2) 中小企業の生産性

2016年の中小企業白書

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/PDF/h28_pdf_mokujityuu.html
に、生産性が詳しく取りだたされ
そして、生産性が優れている会社が、良い会社とされ
貸付も生産性が良いところにいくようになったようだ。

特に中小企業は
生産性が低いところは、潰される可能性がある!!
政府は、大企業に集中し、
生産性が低い中小企業はなくても良いのではないかとまで
考えているふしがある。
だから、
生産性を上げる努力をし、
それが、
日本のGDPにも、寄与するようになるのが良い。
それに、たくさんの企業を見てきて
やはり、これからの中小企業は
利益率を重視した経営が良いようだ。
中小企業は、大企業のすべてをやるというより
特化した何かをやり、これならば大企業に負けない
何かを作らないと、生き残りにくい。
だから、生産性を意識する事が大切なのだ。

(2) 日本の実情

1) GDPの各国伸び率

1990年と、2019年の比較

2000年と、2019年を比較すると

1990年比(名目GDP G7)
アメリカ、3.6倍
カナダ  3.3
イギリス 3.27
ドイツ  2.6
イタリア 2.4
フランス 2.3
日本   1.2

2000年比(名目GDP G7)
アメリカ、2.09倍
カナダ  2.08
イギリス 2.01
ドイツ  1.631
フランス 1.63
イタリア 1.43
日本   1.06

2000年比(主要国実質GDP)
中国  5.13倍
インド 3.77
ロシア 1.84
アメリカ1.45
ドイツ 1.27
日本  1.17

GDPは、日本は、とにかく横ばいで成長していない。
とくに、2000年以降は成長しておらず

一人当たりGDPは
下記の通り、

2000年を過ぎると、20位台で推移しているようになる。

1人当たりGDP日本の順位推移
1990年 8位
1991年 4位
1992年 4位
1993年 3位
1994年 3位
1995年 3位
1996年 3位
1997年 4位
1998年 6位
1999年 4位
2000年 2位
2001年 5位
2002年 8位
2003年 12位
2004年 14位
2005年 15位
2006年 20位
2007年 22位
2008年 24位
2009年 18位
2010年 18位
2011年 17位
2012年 15位
2013年 26位
2014年 27位
2015年 26位
2016年 23位
2017年 25位
2018年 26位

日本が怖いのは
変わっていないので
相対的に他国と比べて
下がっていることに気づきにくいのだ。

2) 日本の物価

日本はモノの値段、物価に関しても
ほとんど変わりがなく横ばい。

世界では、値段が上昇しているので
差がついている。

昔と違い、
今では、日本は最も安い国の一つとされ

だから、
コロナ前では、海外旅行客が多かったのだ。

30年前に日本人が安いから
韓国やタイなどに旅行行くのと同じ現象が

外国人から日本を安いから、遊び行きたい
と、なっているのだ。

身近な物価では
1ドル109.5円

「1.5リットルボトルの水」
ニューヨーク 235円
ロンドン   135円
シンガポール 129円
東京     127円
ソウル    124円
上海      74円

「スターバックスコーヒーラテトールサイズ」
ロンドン   571円
ニューヨーク 542円
上海     541円
シンガポール 502円
ソウル    442円
東京     380円

「マクドナルド ビッグマック」
ニューヨーク 776円
ロンドン   531円
シンガポール 482円
ソウル    442円
東京     390円
上海     372円

3) 日本の初任給

大学新卒男子
1990年比 125.3%
2000年比 108.1%

1990年を20万円と仮定すると
2000年 23万1800円
2019年 25万600円


独立行政法人労働政策研究・研修機構https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0404.html より

あまり変わっていないといわざるを得ない。


他の国と比べると、2019年のデータでは

スイス  902万円
アメリカ 629万円
ドイツ  531万円
フランス 369万円
韓国   286万円
日本   262万円
と、なっている。


4) ディズニーとダイソー等の価格

ディズニー
フロリダ 1万4,500円(DP)
上海   1万1,200円(DP)
パリ   1万800円(DP)
日本    8,200円(固定)

DPは、ダイナミックプライシング
季節や、混雑で価格が変わる。
2021年2月の価格


ダイソー
オーストラリア 220円
タイ      210円
台湾      180円
中国      160円
アメリカ    160円
シンガポール  160円
ブラジル    150円
日本      100円


ビッグマック(エコノミストのビッグマック指数より)
https://www.economist.com/big-mac-index

スイス 98.6
ノルウェイ 77.7
スエーデン 74.6
アメリカ  59.3
カナダ   49.8
シンガポール21.6
韓国    12.7
タイ    10.0
日本     0(基準)

つまり
日本の価格390円に上記を掛けると

スイス   775円
ノルウェイ 693円
スエーデン 680円
アメリカ  621円
カナダ   584円
シンガポール474円
韓国    439円
タイ    429円
日本    390円(基準)

どれくらい、日本が安くなっているかがわかる。。。


5) 平均賃金

OECDの平均賃金でみると

1990年22カ国中、日本は、37,854ドル 9位 平均より高い
2000年36カ国中、日本は、39,623ドル 11位 平均より高い
2016年35カ国中、日本は、39,113ドル 19位 平均より低い
2020年36カ国中、日本は、38,515ドル 22位 平均より低い

と、平均賃金の額自体は、変化していないが
順位は大きく下げている。




2020年では、韓国に抜かれ約40万円年収で韓国の方が高い。


この傾向は、賃金、物価だけではなく
すべてにおいて同じになっているようだ。

日本は、ここ30年変わらず、一定で
世界各国は、成長してきた。

だから、相対的に日本のランキングが落ちてきたということだ。


これだけの先進国で
物価が安いというのは、住みやすいのかもしれない。

ただ、この物価の安さが、そのまま続くとは考えにくい。
なぜなら、日本は、輸入大国だからだ。

輸入しないと成り立たないものが多い。

だから、このまま日本が成長しないと
直近のエネルギー費、ガソリンなどの急騰のように
物価が急激に上がる可能性もある。

だから、ある程度は成長しないといけないのではないだろうか?

(3) なぜ日本は安くなった?

1) 生産性の歴史

日本は製造業が強い。
特にトヨタが日本の製造業を引っ張ってきた。

だから、日本は
早く、安く、良い物を作ることに徹し
QCDと呼ばれる、
Q(クオリティ、品質)
C(コスト、費用)
D(デリバリー、納期)
を徹底して良くすることをし

日本が得意であり、日本一になれたのが
同じ価格で、原価を下げる手法だった。

これは、時代背景が
同じものを、安く買いたい。
なぜなら、持っていないので欲しいというのがあったから。

車を持っていない
でも欲しい。
安いのがトヨタから出た
これなら買える。

というのが日本の時代背景ではあった。
そして、日本の後は、世界中でこの需要があったのだ。


しかし、最近は、ほとんどの人が新しく買うのではなく
買い替え需要であり、豊かにもなってきたので

高くても、欲しいものを買いたい。
つまり、
同じものをより安くという時代から

付加価値の高いものを、価格が高くても買いたい。

というニーズに変わってきたのだ。

そして、この高付加価値というのが
日本が苦手だったから変化をしなかったのかもしれない。


2)  日本は安い、日本は値上げに敏感?なぜ?

価格上昇に敏感な日本
なぜか?
それは、思い込み

東京大学大学院渡辺努教授によると

政策の失敗で、バブルの後に、物価上昇率を抑える方向に持っていった。
その後、2000年頃に、物価上昇に戻さなかったので
消費者の頭に、物価は上がらないというのがすり込まれてしまったようだ。

今となっては、値上げがしにくい国になってしまったようだ。


3) 値上げできない国日本!?

カゴメケチャップ 25年ぶりに値上げ 1990年7月以来
鳥貴族 2017年に 約6%値上げ → 業績低迷
ユニクロ 2014年5%値上げ → 既存店前年割れ

値上げに、超敏感になってしまった日本。

これは、ガリガリ君の値上げCM
https://youtu.be/xpltiHWtvXA

たった10円の値上げで、このCM。

世界中で、ここまでしないといけないのか?という反応だったそうだ。


しかし、その反面
QBハウスは、値上げに成功している。 1080円→1200円

ここにヒントがあるように思う。

唯一無二の商品サービスを作ることにより
価格統制力を持ち、
価格を強気でつけることができるのが
日本の中小企業がやるべき事だろう。

(4) 生産性を上げるにはどうしたら良いのか?

1) 生産性とは?早く造ることではない??

高級車の組み立て時間は

日本が   約17時間
アメリカが 約33~38時間
ヨーロッパ 約37~111時間

とここまで違う

要約すると
ヨーロッパでは、5倍の時間をかけて作った車
を10倍の価格で売る

生産性は、日本より2倍になるのだ。


高くてもよいものが欲しい。
良い物は時間かかっても手に入れたいと

前述した、日本の製造業ががんばってきた
QCD(品質、費用、納期)
このうち、2つが、日本のがんばりとは逆でも売れるということなのだ。

現に日本でも
1000万円超の高級輸入車の販売が好調だ。8月の販売台数は新型コロナウイルス感染拡大前の2019年同月比で1.3倍。2月から19年の実績超えが続く。
6月には19年比で1.8倍になった。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC273Y60X20C21A8000000/

高くても売れ、
ベンツGLB200d 納車8~9か月待ち
メーカー希望小売価格(税込):¥5,810,000
手付金100万円

納期がかかっても売れている。


しかし、これは、外国車だけではなく
日本車でも高級な車が、納期かかっても売れている。

トヨタの新しい車、ランドクルーザー
ZX 3.5L ガソリン(7人乗り) 7,300,000円
GR SPORT 3.5L ガソリン(7人乗り) 7,700,000円
と、高い車だが
納期2年待ちだそうだ。


他とは違う物を提供するというのがヒントのようだ。


2) 日米生産性違い

日本生産性本部のデータによると
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/10bad8fb307149202fee4c4be50b5f9d_1.pdf


アメリカの生産性を100とすると

日本の
宿泊、飲食業は、36.6
卸売、小売りは、32.3と非常に低い。


3) 生産性の概念

ものすごく要約すると
生産性とは、
粗利(売上総利益)を人数と時間で掛け合わせたもので割ると出てくる。

1人、1時間で、どれだけの粗利益を稼げるかだ。

歴史的に見ると
電車には、数多くの切符を切る人がいた。

それが、現在ではひとりもいない
すべて自動改札に変わった。

それだけ、人が関わらなくなったので
生産性は上がっている。

4) アメリカが生産性が強いのはなぜか?

米景気回復、DXが寄与
生産性2.6%上昇、10年ぶり伸び率
米経済が新型コロナウイルス危機前の水準に戻りつつある。

コロナ禍で労働現場の自動化が進み、20年の生産性は2.6%上昇して10年ぶりの高い伸びとなった。

カジノホテルチェーン「MGMリゾーツ・インターナショナル」。

コロナ危機が深刻になった20年6月、スマートフォン用アプリを開発し、チェックインから電子キーの発行、精算まで全面自動化した。

宿泊産業では感染防止へDXによる省人化が急加速。
米調査会社によると全米のホテルの1部屋あたり人件費は44ドルまで下がり、前年の85ドルから1年間でほぼ半減した。

米ハンバーガーチェーンのマクドナルドは、20年からドライブスルーの注文時に自動で音声認識して人手を省く人工知能(AI)システムの導入を始めた。コロナ禍で店内営業が制限され、売上高の70%はドライブスルーになった。
AI導入で商品提供を30秒ほど早められるという。

配送大手のフェデックスは、家庭への配達を無人化する「宅配ロボット」の実証実験に同年中にも乗り出すと表明。

小売り最大手ウォルマートも、店舗間の配送を自動運転トラックに替える実験を21年中に始める。

米国は新型コロナの感染者数・死者数とも世界最悪だが、国内総生産(GDP)は10~12月期に危機前の97.5%まで回復し、21年半ばに日欧に先駆けてコロナ危機前の水準を取り戻しそうだ。

20年の生産性(時間あたり産出量)の伸びは前年比2.6%と前年(1.7%)から大きく改善。直近5年の平均(1.3%)の2倍になった。

在宅勤務も生産性を引き上げる。
グーグルのデータによると、2月初旬の米国のオフィスの人出は前年同期比33%減り、日本(13%減)より在宅勤務の普及が進む。

 

OECDの統計によると、08年の金融危機時も米国の生産性は直後の09年に前年比3.3%上昇。

逆に日本は1.2%低下し、ユーロ圏も1.1%下がった。


生産性の向上は「雇用なき回復」に直結するリスクがある。
MGMは20年8月、米従業員の25%にあたる1万8千人に解雇を通達した。

米労働市場全体でみても、就業者数(非農業部門)は危機前より6.3%も少ないままだ。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69359700T20C21A2EA1000/


とにかく、人を掛けないでできないかを考える思考回路になっている。

なぜか?

個々人の能力の違いだろう。

日本人は、基本、一人一人の能力が高い。
高い費用を払って、自動化しなくとも、人が器用にこなす。

しかし、アメリカ人は、個々人の間違えが多い。
だから、経営者側から見ると、仕組み化しないと行けないのだろう。

だから、生産性が高くなったのも理由の一つだろう。


5) 日本の、中小企業が生産性上げるには?

・独自の固有の長所を作る 
 →非競争・一番→ 販価を上げる
・安くしようからの脱却
・P/Lの人件費を、B/Sの資産にできないか?
・効率だけではない
・サービスはタダではない
・研修をする
・雇用環境よくする(集中できるように)

そして、DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れる。

難しいものではなく、簡単なことから

中小企業のDX

・専門は専門に任す

・時間をお金で買う
 ・専門家
 ・中途採用
 ・M&A

・共有する
 ・データ、書類
 ・コミュニケーションツール
 ・スケジュール
 ・多能工

・リモートできる
 ・印刷しなくて良いように
 ・クラウド
 ・M&A

・ハイブリッド売上
 ・BtoC → BtoB


ぜひ、参考にして欲しい。

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