この数字は、60 歳以上のシニア層の個人金融資産残高の推計である( 三菱総合研究所調べ)。総残高1,500 兆円の約6 割を60 歳以上が保有しており、人口減少と少子高齢化が進行する日本において一大勢力を築いている。
全人口に占める65歳以上人口を示す高齢化率は、2011 年の23%から2015 年には27%まで高まると予想されており、このシニア層を攻略した企業が、勝ち組となるといっても過言ではないのだ。
統計によると、このシニア層の楽しみや関心は、「ひとりの時間」が68%とトップで、「旅行」「夫婦の時間」「友人・仲間との時間」と続いている。実際に旅行会社では、1 人参加用の旅行ツアーが人気で、シニア層の申し込みが多いという。シニア層では、未婚・死別などで単身世帯数が増加しており、“ おひとりさま”をコンセプト・テーマにした商品やサービスが、ジャンルを問わず人気を集めている。
その一方で、夫婦や友人・仲間たちとのふれあい・つながりを大切にする傾向もみられる。このようにシニア層は、ライフステージの節目を迎える年齢であり、生活スタイルや価値観の多様化が顕著であるだけに、とても一括りにすることはできないが、求める商品やサービスには一定の共通性がある。
それは、①説明なしでも用途や利点が明確 ②身近な娯楽 ③健康・環境志向―の3 つだ。
現に、火を使わないIHクッキングヒーターや、消費電力が少ないLED 電球、ケーブルテレビの利用などが、他の年代を上回っている。また、健康食品分野においても、当然シニア世代は一大市場となっている。
一般的に、人は年齢を重ねると、だんだん新しいモノ・コトに興味や関心が薄れていく。その代りに、自分が若かった頃に興味があったことや流行ったもの、慣れ親しんだものを懐かしむ。また、昔できなかったことにお金を使うという側面もある。
そのような傾向から、昔流行った音楽や遊び、商品などがリバイバルしており、それらの要素を上手に取り込めば、シニア層の潜在的ニーズを掴むチャンスがあるのだ。シニア層は、自分の生活シーンにおいて価値があるかどうか―を購買の判断基
準に据えており、この点を踏まえた訴求方法を模索していくべきである。
いずれにしても、自社が保有するシニア顧客はどのような生活レベルか―、情報や知識をどのように収集しているのか―等々、シニア層の攻略には、対話を通じて、その実態を探る努力が必要不可欠である。