大企業であれ、中小企業であれ、会社が実力昇給を放棄することは、給料分という言葉どおり、クビにならずにすむ程度の成果しか社員に期待しないと言う事である。会社の将来のために優れた人材を大切に育てたいとのぞむのであれば、実力昇給だけは実施しなければなりませんと第21話のコラムで申し上げました。
そこで今回は2011年春季労使交渉(春季賃金闘争)の労使の主張を取り上げてみました。
●日本経団連:2011春季労使交渉に臨む経営側のスタンス
賃金より雇用を重視して考える必要があり、恒常的な総額人件費の増加を招く要求に対しては、慎重に対応する必要がある。今次労使協議では、定期昇給の維持をめぐる賃金交渉を行う企業が大半を占めると見込まれるとし、
1.定期昇給維持の交渉を行う企業が大半
2.国内事業維持には賃上げ(ベース・アップ)よりも雇用重視
3.非正規労働者賃金の一律引き上げは困難
4.企業の国際競争力向上に内部留保の確保が必要
と主張
●春季賃金闘争に挑む労組の姿勢
生み出された成果が、それに貢献した人々に対して、如何に公正に配分されるかという課題がもっとも重要かつ欠かすことのできないテーマであり、労働者への配分を高め、消費拡大につなげることで経済も成長するとし、
1.賃金カーブ(定昇)維持分の確保
2.非正規労働者を含めた全労働者を対象に、賃金をはじめとする待遇改善
3.企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げ
4.総実労働時間の縮減、時間外、休日労働の割増率引き上げ
を主張しています。
日本経団連は、需給の短期的変動に一時的な業績変動は、賞与・一時金に反映させることが基本となるとし、将来の成長につながる人的投資を検討することがより重要と結んでいます。
他方、連合は「賃金カーブ維持」を前提に「基本給に諸手当、一時金を加えた給与総額の1%引き上げ」を主張しています。
労使とも昇給についての考え方に違いはありませんから、今年の給与改定は、ほとんどの企業が給与規程で定められている定期昇給のみを実施することとなります。