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人間学・古典

第19回 リーダーを支える者(4) 魏徴が望んだ報酬

経営に活かす“十八史略”

自分を支えてくれた者に対して、それなりの報酬を与えるのは当然のことです。では報酬にはどんなものがあるでしょうか。

国や企業など、人の集団が繁栄に向かうとき、求心力としてはたらくのは

   ・富

 です。食うや食わずの状態から脱し、豊かな生活を築きたいという欲求は誰の心にもあります。それを上手に刺激したとき、人はやる気を出すもの。

 また、富の他では、

    ・名誉

 も報酬になります。

 一般に名誉職と言われるものがそうですし、国が与える叙勲(じょくん)も本人にとっては名誉なことです。大々的に報じられる「国民栄誉賞」はその最たるものでしょう。

しかし、人は富や名誉のためだけに働くのではないのです。

リーダーが自分の右腕、左腕とする者が富や名誉のみを目的に働くような人物では、はなはだ心もとないと言わざるを得ません。

 

「十八史略」には、富以外のものを追い求めた幹部人材が多数、登場します。

 唐(とう)の名宰相、魏徴(ぎちょう)もその一人。魏徴はあるとき、太宗(たいそう)にこう言いました。

 「どうか私を良臣にならせてください。忠臣にならせないでください」

 太宗は不思議に思い、

 「忠臣と良臣とはどのように違うのか」

 と質問しました。魏徴は答えます。

 「后稷(こうしょく)、契(せつ)、皐陶(こうよう)らは堯(ぎょう)、舜(しゅん)に仕え、君臣ともに心を一つにして国を治めて天下を太平に導き、繁栄を享受しました。これが世にいう良臣でございます。

また、夏(か)の桀(けつ)王の家臣の竜逢(りょうほう)や殷(いん)の紂(ちゅう)王の家臣の比干(ひかん)は、群臣の居並ぶ、君の面前でその非をとがめたため、身は殺され国は滅びました。これが世にいう忠臣でございます」

太宗はこれを聞いて、とても喜んだ。

 

魏徴は、太宗と共に政治を行うことで天下を太平に導きたい、国を繁栄させたいと願ったのです。太宗の良臣になるということは、すなわち天下の役に立つということ。

多くの人間には人生の中で何かを成し遂げたい、という自己実現欲求がありますが、その何かに含まれる要素として重要なものに、

  ・人の役に立つ

 ということがあります。

仮に一軒の家を建てるとしましょう。自分で設計図を書き、材料を集め、こつこつと作業を続けて数年後にようやく完成したとすればうれしいに違いありません。

達成感もありますし、何より資産を築いたのですから。しかし、そこに住むのは自分だけで、誰も尋ねて来ないとすれば寂しい限り。やはり、共に暮らす家族、共に何かに興じる友などがいてこそ、家を建てた甲斐があるというものです。

 優秀なリーダーと共に、多くの人のために役立つ仕事ができれば、これに過ぎる喜びはありません。

 魏徴は太宗に対して良臣となれることを望みました。太宗と共に大仕事を為すことが魏徴の幸福にもつながるからです。魏徴にとって、その仕事そのものが大きな報酬だったのです。

  あなたと共に大きな仕事を成し遂げたいと願う者こそ、最後まで支えてくれる人間である

 と心得てください。

 
 
 
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