【2】ファーストグリーティングはツーストロークで会話の主導権を引き寄せる
お申し出者は、あなたの会社に言いたい思いがたくさんあります。
ですから、こちらの名乗りが言い終わったか言い終わらないかもそこそこに、
一方的に話しだすお申し出者はめずらしくありません。
そうなると、もうお申し出者のペースに巻き込まれて、相槌の打ち所も、事実の確認をするタイミングも、
提案を差し出すべきか否かもわからなくなり、ただいたずらに時間が過ぎていくという、
なす術のない対応をしばしば体験することがあるかと思います。
そんな時あなたの頭の中では「はあ~すっかり会話の主導権をお申し出者に取られてしまった。
どうやって取り戻そうか・・・。」とあきらめの独り言が巡っていませんか?
相手に渡ってしまった会話の主導権は、本来めったに取り戻せるものではないのです。
まして、お申し出者と対応担当者という、同等の立場でない関係でありながら、立場が上の相手が
主導権を握ってしまったなら、もう、あなたへの主導権の移行はあきらめざるを得ません。
でも、クレーム対応の際の会話の主導権が会社側にないと、お申し出者も、会社側のあなたも、
一向に折り合いがつき握手ができる場所にはたどりつけない不幸な時間を積み重ねることになるのです。
なぜなら、一消費者であるお申し出者より、会社側のあなたの方が、商品知識があり、
表示や法律のことに詳しく、お申し出の事例もたくさん持ち、社会問題や消費者動向をよく理解し、
またクレーム対応の手順やマナーやルールを習得しているからです。
(もっとも、それらのスキルが低いとなると今からのお話はあなたは通用しなくなりますが。)
でも、そのように全般的に平均的なスキルを持ち備えているあなたでも、
一度お申し出者に渡ってしまった会話の主導権を取り戻すのは至難の業ですから、
そもそも、最初から会話の主導権をこちらに引き寄せておくことが大切です。
自分に主導権が欲しい人は、ぼんやりしてたらムリですよ。
まして、立場的には、主導権は相手にあって当然の関係なのですから、
あなたが最初に主導権を手に入れるためにはそれ相当の工夫をしなければなりません。
でも、ご安心あれ。それほど難しいことではないんですよ。
そもそも、主導権というものは、成り行きに任せていると立場や年齢や経験数などの高い人や、
性格的に積極的な人の方に渡ってしまうものですが、実はそれにはちょっとしたルールがあったのです。
実は主導権を手に入れる人は知らず知らずのうちに以下の3つのことを実践していたのです。
(1)相手より先に
(2)はっきりとした声で
(3)長い文言であいさつ
をしていたから、会話の主導権を自然に誰にも気づかれずに手に入れていたのです。
「初対面あいさつまでが勝負なり」ということわざでも、この3つのルールは唱えられています。
このルールを知ってからというもの、私は必ずこのルールの2つは実践しています。
そして、お申し出者に一瞬、渡ってしまったかのように思えた会話の主導権を引き寄せた経験は枚挙にいとまがありません。
具体的には、お申し出者がひとまずご自分が連絡してきた概要を不満を交えてお話しした
次の瞬間をファーストグリーティングのタイミングと私は考えているのですが、この時点で、
第10講でお願いした名乗りのあいさつのポイント(1)(2)(3)の声をしっかりと意識して、
そのご不満に対してふた言の言葉をお返しするようにしましょう。
このふた言も「なにを言おう~?」と悩む必要はありません。
“お買い上げくださったお礼”とそれにもかかわらず“ご満足いただけなかったお詫び”
の二つの思いを伝えることからはじめましょう。
例えば、「さようでございますか。このたびはお買い上げありがとうございます。
それにもかかわらずご期待を損ないましたようでまことに申し訳ございません。」というようにです。
お申し出内容や、お申し出者のご不満の程度によって、お礼とお詫びが前後入れ替わってもかまいませんし、
また、お礼ばかりをふた言という場合もあり得ますし、お詫びをふた言という場合もあり得ます。
「ふたこと言うぞ~!」と意思を強く持って、お申し出内容を聴き、言葉を選び準備をし、
お申し出者のご不満の説明が終ったと同時に差し出せるようにしましょう。
中村友妃子
【出所・参考文献】
『クレーム対応のプロが教える“最善の話し方”』(青春出版社刊)