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後継者

第51回 日本人が苦手な交渉術

欧米資産家に学ぶ二世教育

交渉力を鍛えよう

企業買収・提携の仕事に携わっていた時「日本人は交渉下手」だなと痛感した。まじめでしかも行動が読まれやすいだけでなく、「誠意を尽くせばうまく」とか「ことを荒立てるのを好まない」などの日本人に顕著な性向が原因ではないかと思われる。

日本人は一般的に言われるままに行動しがちで交渉をしない。だから生活の万事が交渉で決まる国で鍛えられた人にはコロリとやられてしまう。今やビジネスはグローバル化し、今後ますますその傾向は強まるだろう。そういう時代の後継者には交渉術のトレーニングが不可欠となろう。交渉力としてまず思い浮かぶのは以下の点である。

*自分の主張をはっきり伝える。(可能な限り相手の文化的背景を考えて、その人が理解できるように)

*対立、意見の違いを恐れない。最初は理解されなくても、根負けすることなく、黙りこくらず主張し続ける。

*絶対譲れない点を明確にする。

*こちらの手の内を読まれないようにする。

某社では、毎朝ロールプレイを社員にさせて色々な状況下で「演じる」訓練をさせていると聞いた。これなどは交渉力を鍛えるには非常によい。気まずい雰囲気の中、相手が声を荒げ、机をガンガン叩いて抗議してこようと平然と対応するなどは何回練習したってよいくらいである。

勿論基礎的な訓練としてはコミュニケーション力、発表力をつけることで、これは社内でやっているところは多いし、デール・カーネギーなど外部の研修機関も使える。

交渉場面では自分の立場、自分の考え方、原則をキチンと、できたら相手に「さすが」と唸らせるやり方で表現できなくてはならない。

こちらの主張や考え方を相手の頭に浸透させるのには繰り返しが必要だし、時間に制約がある場合が多いから体力、気力、粘り強さも大切だ。

交渉術にも色々あろう。矢部正秋氏は「ユダヤ式交渉術」の中で、「「ユダヤ人は過酷なハンディキャップを負いながらも、機敏、果断、人をそらさない話術、ユーモアなどのソフトな交渉術で生きのびてきた。ビジネス交渉においては、このようなソフトな交渉力が最も有効であることはユダヤ人の歴史が証明している。だが、ソフトな交渉法には目も向けず、脅迫,警告、圧力といったハード型の交渉法一本やりというのがアメリカ式である。―――」と述べている。たしかにそういう面もあるかもしれない。

アメリカと日本双方に事務所を抱える国際弁護士大橋弘昌氏と会う機会があったが、氏はその著書『負けない交渉術』のなかで「交渉において大事なのは、テクニックではなく“考え方”なのである」と述べている。百戦錬磨の弁護士としての実際的なアドバイス、しかも日本人に欠けている点を的確に指摘している。例えば「交渉においては必ず譲歩する。だから交渉はずうずうしく高いところから始める」「別の相手と取引をするという選択肢を持ったうえで、交渉にのぞめ」「相手にすべてを晒し、心からお願いすれば、何でもすべてうまくいく、はナイーブすぎ」「失敗をおそれずに交渉の席につけ」などなど。

今後事業を成功させえていく上で、あるいは行きのこっていくためにも交渉術は必需品なのである。

 榊原節子 

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