評価制度を「人を育てる器」として整備し、管理職育成の基盤を築くことは、企業にとって欠かせない営みです。制度の設計や着眼点の整理を通じて、評価が単なる査定ではなく、育成のための仕組みとして機能することを前回までに確認してきました。では、その先にある「評価の本質」とは何でしょうか。私はそれを「未来への投資」として捉えるべきだと考えています。
賞与は利益の分配であり、過去の成果に対する対価です。しかし評価は、社員の未来を方向づけるものです。評価を通じて「あなたの成長を期待している」「来期はこういう役割を担ってほしい」と伝えることは、社員にとって自分の未来を描くきっかけになります。人は、自分の存在が認められ、未来に期待されていると感じるときにこそ生き生きと働けるものです。評価はそのメッセージを届ける場であり、社員の幸福やウェルビーイングを支える一端でもあるのです。
12月には、年末賞与の支給が行われます。年末賞与の支給時期は、半年の評価対象期間にとどまらず、この一年間の成果を振り返る節目ともなります。社員が「自分はどう評価されたのか」をより強く意識する瞬間でもあります。だからこそ、このタイミングで経営者からの言葉を添えることが重要なのです。
賞与支給日は、単に支給明細の通知する日ではありません。「あなたの努力を認めている」「来期はこういう役割を期待している」といった未来へのメッセージをしっかり伝えることで、社員の目の色が変わり、次の一年に向けて覚醒することができるのです。賞与の場面は、評価を未来への投資として社員に語りかける絶好の機会だといえましょう。
人手不足が続く中、省人化を前提とした事業展開が避けられない会社が多いことでしょう。しかしそれは単なる人員の削減を目指すものではなく、業務の効率化や付加価値の高い仕事へのシフトを意味します。そのためには、社員一人ひとりが「自分で考えて行動に移せる」ようになることが不可欠。評価を通じて役割を明確にし、成長の方向性を示すことができれば、省人化の時代にあっても組織は競争力を保ち続けられます。
社員の納得感を得るには、経営サイドからの一時的なメッセージだけでは不十分です。会社がどのような方向に進もうとしているのか、その中で社員がどんな役割を果たすのかを、ストーリーとして語ることが必要になのです。
評価とは、等級別に評語(SABCD)を並べるためにあるのではなく、社員と会社の未来をつなぐ言葉なのです。経営者が人事評価の意味を「未来への人的投資」の流れの中で語ることで、社員は自らの成長を会社の発展と重ね合わせ、未来に目を向けて働くことができるのです。
評価制度は、単なる制度論や運用論を超えて、社員の幸福と会社の持続的成長をつなぐものであることが大事です。年末の今こそ、給与と評価の役割を改めて問い直し、来期に向けて「人を育てる会社」としての姿勢を鮮明にする好機といって良いでしょう。社員がはっとする“気づき”を得て、自分で考え、行動に移し、目の色を変えて仕事に向き合うようになる。こうした繰り返しが会社の成長の礎であり、会社の未来を支える原動力なのです。
決して大企業に限った話ではありません。むしろ中小企業だからこそ、経営者の言葉が社員に直接届き、行動を変える力を持つのです。賞与の場面でのひと言、評価面談でのひと言が、社員のやる気のスイッチをオンにし、会社全体の成長を後押しします。小さな取り組みの積み重ねが、確実に未来を変えるのです。



















