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- 第54回 社員の幸せを考えるブレない経営とは?~事例:虎屋
~老舗の生き残りは、経営理念の文言で決まる!!~
「長男が家業を継ぐことは不文律でした」
こう語るのは羊羹で有名な虎屋17代目当主の黒川光博氏です。
虎屋は創業家の人間で経営に関わるのは、1世代につき一人とし、全従業員900人強の中に現在黒川当主と息子以外親類縁者は存在していません。
500年の歴史を紡いできた虎屋を支え、今の繁栄を可能にしたのは、創業家の存在ではなく、老舗であるにもかかわらず、「変えてはいけないものなどない」という意味を含む経営理念の文言でした。
~経営理念から経営方針を生み出せば、経営軸はブレない!!~
羊羹で有名な老舗和菓子企業の虎屋は、2003年羊羹は置かず、トレードマークののれんも掛かっていない和と洋の垣根を超えたTORAYA CAFÉをオープンし、世間の「和菓子は続かない」という噂を払拭します。
羊羹の命とも言うべきあんとチョコレートを組み合わせた「あずきとカカオのフォンダン」はTORAYA CAFÉの顔になり、和菓子でも洋菓子でもない「新しいお菓子」が看板商品になれたのは、虎屋の経営理念の存在です。
<虎屋経営理念>
「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」
TORAYA CAFÉとは
おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂くためには
「変えてはいけないものなどない」という経営理念実現へ向かう経営方針に沿った実践でもあったのです。
~行動規範を貫けば、経営方針が活力を生み出す!!~
虎屋は500年以上前の掟書(以下抜粋)を老舗の矜持として今も行動規範として守りながら、1991年に経営トップに就任した当主黒川氏が現場と共有した経営理念によって、時代の変化に対応しようと常に柔軟な経営判断を実践しています。
<天正年間(1573年~1592年)に策定した当時の掟書>(弊社で意味を要約)
一、倹約を第一に心がけ、良い提案があれば各自文書にして提案すること。(チャレンジ)
一、菓子の製造にあたっては常に清潔を心がけ、口や手などをたびたび洗うこと。(清潔)
一、御用のお客様でも、町方のお客様でも丁寧に接すること。(礼儀)
一、道でお会いした場合は丁寧に挨拶すること。(挨拶)
一、仲間を組んで悪いことした者がいる場合は、届け出ること。
もしその仲間であっても抜けた場合は許して褒美も出す。(規律)
一、手代や子供(丁稚)に至るまで、常に書道や算術の勉強を怠ってはいけない。(こだわり)
一、奉公人には毎月二回酒肴を出す。(報いる)
掟書が浸透している虎屋だから、 “変えてはいけないものなどない”の本当の意味が伝わり、現場に自主性が生まれてくるのです。
~羊羹をチョコレートのような世界商品にする!!~
虎屋の当主黒川氏は1980年のパリ店舗の成功から、「和菓子は将来も残る」と確信した結果、羊羹をチョコレートのようにグローバル化すべく、チョコレートと羊羹の原材料の比較、そして発酵、焙煎という工程をシュミレーションすることで、羊羹から派生した新商品開発を視野に入れ、動き始めています。
「古い和菓子屋だから、こんなことはしちゃいけない、そういう発想は一切ありません!」
こう語るトップは
老舗虎屋の原材料へのこだわりは愚直なまでに固執しつつも、株主に左右されない意思決定の速さを武器に、経営理念「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」過程で現場に企業風土を培っているのです。
虎屋HP(伝統と文化)