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人間学・古典

第12講 「言志四録その12」
小人にして多才多芸の者あり。まさに人の国を乱るに足る。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学

【意味】
小器量の人物の才能を信じ組織(国)の権限を与えた場合には、
その人物は組織(国)を乱すだけである。



【解説】
人器と酒器。
日本酒には品の良いお猪口が似合い、ワインならば肉の薄いグラスがよいですね。
酒飲みは酒を飲む器にこだわりますが、酒器の機能は散逸する性質をもつ酒をこぼさないことにあります。
上に立つ人も部下の人心を汲み上げなければなりませんから、その人物器量を評して『人器』というわけです。

人物器量の小さい者が高い地位に就くことは、風呂の水汲みをお猪口でするようなものです。
部下を忙しく立ち回らせるだけで、成果をあげるどころか職場を混乱させる結果になってしまいます。
ですから、知恵才覚も大切ですが、地位を得た人が何よりも優先したいのは「自己の器造り」です。


2500年前の聖人孔子の思想を伝える『論語』に、舜帝・禹帝の話があります。
舜は堯とともに聖人の代表とされる中国古代伝説の五帝の一人、禹は、その舜の後を継いだ夏王朝の創始者です。
孔子は2人の政治を評して、「何と見事なことか!舜・禹が天下を治めたやり方は、何と見事か!
自ら直接政治に関与することなく、有能な部下を信頼して任せきった」と言っています。
この両帝には、「自らの治世を任せられる人物の器量」を見抜く力量が備わっていたということです。

今から400年ほど前に書かれた『呻吟語』(呂新吾著)には、第一等の人物資質を「深沈厚重」の人物、二等を
「磊落豪雄」の人物、三等は「聡明才弁」の人物つとありますが、きっと舜帝や禹帝は第一等に近い評価をされる
人物であったろうと予想できます。


人類のここ100年は、経済社会の発展とともに、世界の実業界で器量ある人々が活躍し、各国の経済を支えてきてくれました。
しかし最近は、弁が立ち頭が切れる第三等型の人物が増える傾向にあり、
マネーゲームに才のある人物が脚光を浴びるような風潮が出てきました。
産業や商業を発展させて社会を支える実業社会から、金の遣り取りだけの虚業社会に移っては、
爆発的に増える地球の人口を養っていけるかどうか心配です。


しかし、人物器量の自己修行には、昔から確固たる妙案がありませんでした。
今までの器造りは漠然としたもので、努力の成果を確認する具体的なバロメーターがなかったのです。
そのため2~3年の努力で目立った成果が確認できない人達は、途中で修行の方法に自信を失い挫折することになりました。

この自己修行の弱点を克服したのが、我々の主催します「人間学読書会」が推奨する「名言の和紙清書法」です。
読書をした後、気に入った名言を和紙に書き写すだけの修行です。

千枚、二千枚と溜まっていくにつれ、自己修行の成果に自身が湧き、
更なるレベルに向けて修行しようとする不思議な活力が生まれてきます。
ですから困難だった自己修行が10年20年と継続できるのです。

「人間学読書会」は20年続いていますが、会の運営うんぬんよりも、
会員の皆さんの「名言の和紙清書法」による自己修行の継続によるところが大きいようです。


【和紙清書法】

・「読書」には、書を読むことだけではなく、読んで書くことにも重要な意味があります。
せっかく名著のエキスに触れるわけですから、それを記憶にとどめ自らの血肉としていくために、
読んで終わりとならないような工夫をするわけです。

この「和紙清書法」は、

  (1)眼と頭を使う一般的な読書に加え、
  (2)気に入った名句名言に傍線を付し、
  (3)更にこれを和紙に清書します。
  (4)同時に、日付・氏名・年齢を記入し、
  (5)意識してその教えを生活に活用する・・・のです。


我々の体験ですと、書き上げた和紙の蓄積が自己成長に感じられ、
清書枚数が一定の壁(千枚から二千枚)を越えるとそれが生活の一部となり、読書や和紙清書が習慣化されていきます。

会員の最高の清書枚数は年間12,000枚ですが、ここまでくると本格的な修行になりますから、その効果も抜群です。


杉山巌海

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