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製造業

第202号 「ものすごいモノづくり」は日本のお家芸

柿内幸夫─社長のための現場改善

 北京に出張したついでに万里の長城を見てきました。こんなに険しい山に7000㎞にも渡りこんなに立派な城壁をいったいどうやって作ったんだろうと思いそのすござに本当に驚きました。
 このすごさには説明が要りません。今回、日本の製造業はすごさを身に付けるべきと書きましたが、改めて頑張らなくっちゃと思いました。

kaki202-1.jpg さて、これまでレベル2の工程間の流れの改善について段取り替え時間の短縮と品質の向上を中心にその方法の説明をして参りました。今回はレベル2のまとめをいたします。

  レベル0:ダンゴ生産

  レベル1:工程内の流れ

  レベル2:工程間の流れ

  レベル3:工場内の流れ

  レベル4:工場間の流れ

  レベル5:お客様への流れ

  レベル6:一気通貫の流れ

 ところで、私が30代のころ(30年前)、モノづくりは日本のお家芸であると世界に誇っていたのですが、残念ながらその時代は過ぎ去ったようです。

 世界でグローバル化が始まって、その結果、今は世界がフラット化に向かっています。フラットとは平らという意味ですから、世界中が同じレベルになっていくということです。

 例えば、自動車でも大衆車クラスであれば、世界中で同一品質のものを作れるようになっています。では日本のモノづくりはどうなるのか?! 

 私は日本のモノづくりをもう一段レベルアップすることが必要だと思っています。それを言葉にすると、「モノづくりは日本のお家芸」から「ものすごいモノづくりは日本のお家芸」と、みんなが言う時代を作ろうではありませんか!となります。

 どのくらいものすごいかですが、びっくりするような新しいことではありません。今回取り上げた段取り替えであれば、すべて1分未満、ほとんどが一瞬で終わるようにします。

 ですから、それがプレスであろうが射出成型であろうがすべて一個ずつ作ることになります。ロット生産なし、在庫なしです。

 そして品質は、もちろん不良ゼロ。作るもののすべてが良品ですから検査はありません。そのまま出荷します。

 これができればリードタイムは超短縮ですから、営業はすごい力を持ちます。在庫も激減でキャッシュフローは万全です。そして品質がいいので余計な品質コストがかからず、経営の内容は全く変わるでしょう。

 当然ですが、このようなレベルになるには会社の全員が一緒になってモノづくりのレベルアップに取り組む必要があります。

 営業はもちろん、設計・技術から調達・製造そして管理の人たちがみんなでものすごいモノづくりの実現に向かって走り出します。

 ところが、これまでの前提を踏襲していてはすぐに壁にぶつかります。例えば、材料ならば素材レベルから再検討しないと無理という事態も起きるでしょう。

 そうなってしまうと会社に専門家はいないし…、ということになりますが、こんなところで諦めることはありません。

 地元の工業試験所やあるいは大学などにいる専門家を訪ねてみるようなこともやってみるし、そこでの発見が大きな力になるでしょう。

 まだアート商会という会社でピストンリングを作っていたころの本田宗一郎が、ピストンリングの製作がなかなかうまくいかず、鋳物の基礎知識を学ぶため浜松高等工業機械科(現静岡大学工学科)の聴講生となって、基礎から勉強を始めたという話をご存知の方は多いと思います。

 私たちもそのころの本田宗一郎の気持ちに立ち返るということでしょうか。

 フラット化された社会で生き残り勝ち進むためには選択できる方法は二つだと思います。一つはフラット化された社会での対等な競争でこれは大量生産大量販売の世界だと考えます。

 もう一つは、日本でしかできないすごいモノづくりを前提とした競争です。すなわち、フラットにならないでぴょこんと飛び抜けることです。

 私はこれが日本の製造業が新たに開発すべき方向であると考えています。レベル2の工程間の流れの話からここまで来てしまいましたが、私はこの流れの追求の結果に、日本の将来のモノづくりの発展があると考えております。

 さあ、みんなで新しい時代に向かって一歩一歩前に進みましょう!

kaki202-2.gif

copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net

 

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