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製造業

第284号 出荷に間に合う、最もゆっくりなスピードで造れ

柿内幸夫─社長のための現場改善

 今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実例を挙げて解説します。  

 【急所70】出荷に間に合う、最もゆっくりなスピードで造れ。(164頁)
 
 以前、私には「何かというと急いでしまう」という傾向がありました。例えば電車に乗ろうとして、目の前で扉が閉まりそうになると、つい走って飛び乗ろうとしていました。
 
 別に急ぐ必要はないし、次の電車がすぐ来ると分かっていても走りました。要はせっかちだったということです。(今はあまり走りません。むしろモタモタしてます^ ^;)
 
 そして、このような反応をする人は、決して私だけではありません。けっこうよく見かけます。というか、かなり多くの方がこういう感じなのではと思っていますが、皆さんはいかがでしょうか?
 
 とはいえ、モノづくりではこの傾向と真逆でなければなりません。つまり、「もし間に合うと分かっているのなら、決して走らず、むしろ、もっと間に合うギリギリの電車が来るまで待ちなさい」、です(ちょっと変な言い方で、恐縮です)。
 
 たとえば、私の指導先のY社の組み立てラインの壁には、「間に合う、最もゆっくりなスピードで一人で作ろう!」というスローガンが貼ってあります。
 
 しかし、単に「ゆっくり」と言ってしまうと、生産性が落ちてしまいます。そこで、このスローガンには条件をつけてあり、「一人で一回つかんだら離さないで」というものです。
 
 この意味するところを、以下クイズ形成で詳しくご説明いたしますので、ぜひご一緒に考えて頂きたいと思います。 
 
 【問題】
 一人で作れば二日間かかり、二人で作業分担してやれば一日で終わる仕事があったとします。それを二日後に完成して出荷する場合、どうやってそのモノを作りますか?
 
 ① 一人で今から作り始める。
 
 ② 二人で今から作り始める。
 
 ③ 二人で明日から作り始める
 
 さて、正解はどれでしょう。
 
 ① 一人で今から作ればちょうど二日後に出来上がりますからジャストインタイムです。しかし、もう一人の人はすることがありませんから、二日間は完全に手待ちになります。
 
 ② 二人で今から作り始めれば一日でできますから、前半は二人ともに仕事がありますが、後半は二人とも丸一日間、手待ちになります。
 
 ③ 二人で明日作り始めれば、明日出来上がりますから①と同様ジャストインタイムです。しかし今日は二人ともすることがありません。
 
 皆さんでしたらどのやり方を取られますか?
 
 私が選ぶ答えは①、すなわち、一人で作ってちょうど間に合うようにします。そして、もう一人の人は二日間まるまる空き時間になりますから、そういう時にしてもらうべきことを普段から用意しておいてやってもらいます。例えば5Sとか改善の実行です。
 
 なぜ②や③ではいけないのか? もちろん、いろいろな条件が会社によっても、業態によっても、タイミングによってもありますから、絶対これがダメということではありません。
 
 とはいえ、私の考えですが、②では二人でやると一日早くできてしまうので、出荷当日までの間に運搬や置き場所が必要になったりのムダが発生します。そして、その分在庫を持つことになりますから、当然場所もお金もかかります。これはやめましょう。
 
 しかし、③はジャストインタイムですから、②のような大きな問題はありません。ではなぜ、私は③を選ばないか?
 
 その理由は、一人で何でもできてしまうことの有効性に着目するからです。すなわち、普段から一人で生産が完結するような訓練をしていると、あらゆるバリエーションの生産に対応できるからです。
 
 たとえば、これからオリンピックまでの6年間、基本的に景気は上向くことと思います。その時の仕事の増は品種の増も伴うことでしょう。そうすると、もし一人ですべてをこなせるような準備があれば、複数の人で「同時に」「何種類もの」生産ができますから、在庫や生産性や品質向上に貢献することでしょう。
 
 このような理由で私は①を選びます。もちろん、訓練なども必要なので簡単ではありませんが、より高いレベルの技術にチャレンジしていただきたいと考えます。
 
 
 

284.jpg

copyright ゆきち先生 http://yukichisensei.com/

 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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