今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実例を挙げて解説します。
【急所64】自社の実力は、モノづくりの6段階のレベルで把握せよ。(7)(152頁)
私はその時に読んでいた数冊の本を紹介したり、自分がSさんの年齢であった頃(30年前)に同じ悩みを持っていたことを白状した上で、次のようなことをお伝えしました。
「Sさんが何を勉強したらいいかをお答えするためには、私がSさんは何を知らないかを知っていなければなりません。ただそれは私には分からないし、Sさんにだって分からないことであると思います。」
「そこで一つの方法を提案します。今までやったことがない改善にチャレンジするのです。例えばSさんが担当している生産ラインは現在〈レベル1〉です。それを〈レベル2〉に引き上げることをやってみてください。そう簡単ではないと思うけど、全く歯が立たないということもありません。こういうチャレンジをすると、自分が何を学ぶ必要があるかが分かりますよ。ひと月後にまた来るけど、その時までに全力で〈レベル2〉実現にチャレンジしておいて下さいね。」
そしてひと月後の6月に再びY社に伺い、早速Sさんがどういう改善をしてくれたかを見に行きました。結果はというと、かなり苦戦していました。
〈レベル1〉の「工程内の流れ」は自分のライン内なので完成できたのですが、前工程との間で〈レベル2〉の「工程間の流れ」を実行しようとしたところ、前工程の人の十分な協力を得られなかったので思うように改善できなかったということでした。
Sさんに原因を聞くと、既にかなりうまくいかなかった理由の分析をしていました。例えば、前工程のリーダーや製造部の上司の方たちへ「やりたい理由」や「生まれる効果」などを説明していなかったことや、スケジュールの調整の仕方がヘタクソだったと反省していました。
Sさんは、これまであまり組織をまたがる仕事を経験していなかったのですが、このチャレンジをきっかけに、組織の使い方の勉強が必要だと気付いたのです。
Sさんからは、「次回の改善会までにこの〈レベル2〉は完成します。そのためにと言ってはなんですが、前工程と私たちに改めて流れの話をしてくれませんか?」と頼まれました。もちろん喜んで話をいたしました。Sさんは、コンサルタントの使い方も上手になりました。
この例でお分かりと思いますが、〈レベル1〉から〈レベル2〉に上がるだけでも結構大変です。しかし、頑張って〈レベル6〉に到達したら、誰にも絶対負けない力が得られます。
9回にわたった「流れのレベル」の話は今回でおしまいです。皆様でまずは1つレベルを上げる活動を開始してください。どうぞよろしくお願いします。
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