デジタル技術で人々の暮らしをより良いモノに変えようという、DX(デジタルトランスフォーメーション)という概念が広がっています。壮大なテーマですが、その一部としてのIT化が、日常や仕事の中にも徐々に浸透してきました。筆者が関わる製造業においては、機械部品の製造で大幅な効率化を目の当たりにし、感心しきり。
今回は、限られた業界のほんの一例ですが、DX化/IT化の恩恵をご紹介したいと思います。様々な分野でもヒントになれば幸いです。
■だれでも簡単にオリジナルの機械部品が手に入る!
ここでの機械部品とは、家電や機械類を構成する、主に金属製の切削部品を指しています。金型が不要で、少量生産も現実的。試作にも適します。
まず、ツールのデジタル化。CNCなどと呼ばれる切削工作機器は、コンピューター制御により、無人で正確な作業が可能です。前準備にはノウハウが必要ですが、一度動き出せば、後は機械に任せることができます。CNC機器の精度やメンテナンス状態にもよりますが、デジタル化以前の手作業と比べると、生産地や職人の技能だけに頼らず、安定した製造が可能になりました。こうしたツールのデジタル化は「デジタイゼーション」と呼ばれています。
次にプロセスのデジタル化。設計者と製造工場が誤解なくやりとりするための図面作成には、専門的な知識が必要でしたが、3D CADソフトウェアの普及と競争にともない、より使い易く低価格化も進行。パソコンの処理性能向上もあり、個人レベルでも図面に相当するデータの作成が可能になっています。
3D CADデータは世界共通。言語の壁を低くし、海外の工場に見積もりを依頼するのも容易です。実際にAlibaba(世界有数の B to B Eコマースマーケットプレイス)で中国の業者をみつけて、見積もりと製作を依頼しましたが、やりとりは3D CADデータの送付だけで済み、成果物も十分なクオリティーでした。表面の仕上げの状態や品質、保証などが心配なら、もちろん、国内の商社や製造業者に依頼するのもよいでしょう。
【3D CADソフトの例: FreeCAD】
シェアウェア。無料でも利用可能ながら、本格的なパラメトリック機能(後から寸法などの修正が可能)を備える本格派。3D CADを体験してみたい方にお勧め。
■WEBだけで発注を完結
ここからがこの記事の本題です。発注者の視点では、業者をピックアップした後も、詳細の確認、見積もりや発注は、メールや電話だと、なかなか骨が折れます。ここをDX化/IT化で効率化するサービスが登場し、注目に値します。
筆者がいくつか試したサービスのうち、特に便利に感じたのが、「maviy」(メビー)。
https://meviy.misumi-ec.com/ja-jp/
3D CADデータをアップロードすると、自動見積もりシステムにより、最短10分程度で回答が得られます。用意されている素材から選択ができ、個数や納期日数によって再見積もりも自在。実に快適です。また、同サイトでは、コストダウンのための設計ノウハウも解説。目的とする機能が損なわれない範囲で、工作機械が作り易い形状を考慮して変更するのがポイントで、設計の熟練者ではない筆者の場合、30%くらい低減できました。また、自動見積もりは気兼ねなく何度でも行えるので、試行錯誤も可能です。
ほか、アップロードしたデータを共有して、第三者が発注できる機能もあるとのことで、モノ作りや流通のDX的変革も予感させられます。
■さいごに
パソコンやソフトウェアの発展により、3D CADデータの作成が容易に。また、発注者と工場を仲介するWEB上のサービスが登場し、さらに高度な自動化によってやりとりがシンプルかつ迅速に。受託する工場側も、デジタル化による効率化や、工作機械の稼働率アップで収益の改善が図れるでしょう。みなさんが属する業界や立場で見方も異なると思いますが、効率化を目的としたデジタル化は、今後も益々加速しそうです。
作りたいと思ったヒトが、簡単に形にできる時代になれば、画期的な新しい製品の登場にも繋がるはずです。