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税務・会計

第91号 BS「格言」 其の三十六(2)

会社を守り抜くための緊急対策

其の三十六(2) 事業承継は税金対策と考えるべからず

 前回、事業承継には手順があり、事業の承継→支配権の承継→財産権の承継を守ることが、事業承継を成功させるために大事だという話をしました。
 今回は、手順の三番目、財産権についてです。
 財産権の譲渡、ここでは自社株式の譲渡についてお話しします。
 中小企業の株式は、市場では売買されないため時価というものがありません。
 ですから、何らかの方法で時価を算定することになります。通常は、バランスシートの純資産の金額を元に算定することになります。
 儲かっている会社の社長が急死して、後継者に自社株式を譲渡する際、自社株がとんでもなく高い評価額となり、相続税が納税できないケースもあります。
 だからでしょうか、自社株の評価を下げることに税理士と一生懸命になっています。
 しかし、よく考えてみればおかしな話です。
 なぜかと言いますと、自社株の評価を下げるというとは、バランスシートの純資産(財産)の評価を下げることになります。
 純資産の評価を下げるということは、より多くの費用を計上することになります。
 つまり、自社株の評価を下げるということは、事業をダメにすることになってしまうのです。
 まさに本末転倒です。
 これまでは、自社株式については、10%の減額措置がありました。つまり、自社株式の課税評価額が1億円であれば、9千万円で評価されていました。
 現在は、取引所の相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度ができました。
 中小企業の後継者が相続等によって取得した自社株式の80%に対応する相続税の納税が猶予されるというものです。
 ただし、5年間、一定の雇用を確保しつつ事業を継続しなければならない等、なかなか条件は厳しいようです。
 計算上はどうかといいますと、自社株式の課税評価が1億円としますと、80%の8000万円分に対する税金が納税猶予されるわけではありません。
 発行済株式総数の2/3以下という限度があります。ですから、先ほどの課税評価額1億円の場合は、1億円×2/3=約6600万円に対して80%ですから、5280万円分に対する税金が納税猶予されることになります。
 もちろん、納税免除ではないのですが、事業を後継者が継続する限り、基本的には税金はかなり楽になったと考えていいでしょう。
 ですから、自社株式の評価を下げるため、バランスシートの自己資本を下げなくても良くなったわけですから、今後は思い切って、財産を増やすことができます。
 もちろん、バランスシートが実質的に債務超過状態であれば、財産は0円ですから、自社株の評価はゼロになり、経営権の承継負担はゼロになります。
 しかし、会社に財産がある場合は、事業の後継者以外の推定相続人との関係で問題が発生することもあります。
 株式会社の場合、通常、普通株式を発行していると思いますが、この普通株式には、議決権という支配権と財産権がくっついているため、事業承継がやりにくくなっているのです。
 この場合、種類株式を活用し、議決権と財産権を分離しますと後継者以外に、議決権を渡さなくてもよくなり、便利です。
 1度の株主総会特別決議で次の事項を決定すれば完了します。
 まず、完全無議決権株式の発行を定款に定める決議をします。これにより、種類株式発行会社になります。
 次に、普通株式を全部取得条項付種類株式にする定款変更を行います。
 そして全部取得条項の発動し、対価として完全無議決権株交付をします。
 この時点で、議決権を持つ株主はゼロになります。
 そして最後に、オーナーに普通株式1株を時価発行します。
 これにより、議決権を有する人はオーナーただひとりになります。他は、株式は保有していますが、財産権(例えば、優先配当)のみの株式になります。
 ところで、創業者はみな苦労したはずです。この苦労、苦難があってこそ成長したと思います。
 それが、自分の子供のことになると、居心地の良い方に向かわせているようです。
 漁師の息子が親の後を継ぎたいといって、居心地のよい環境を作るでしょうか。それは死を意味するかもしれません。
 そこで提案なのですが、事業用バランスシートとオーナー用バランスシートを区分し、後継者には事業に必要な資産と負債のみを残し、残りの資産負債は社長が譲り受けることもひとつの方法です。
 もちろん、これに伴い社長は税金を納めることになります。
 後継者を本当の意味で、第二の創業者として育てる場合には、このようなことは必要なことかも知れません。

 
 

 

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