会社が儲かり社長が贅沢をしたいと思っていても、いつ、いくらまで贅沢をしていいのかなかなかわからないものです。そこで、何かしら指標が必要になり、それによる歯止めが必要になります。
贅沢について特にお話しする理由は、感覚として、蓄財は資産、贅沢は費用になるからです。つまり、贅沢は将来の収入を生まない支出になり、とても危険です。
◆贅沢とは
贅沢品って何でしょうか。
靴、宝石、時計、高級車、ヨット、自家用ジェット、豪邸、豪華な旅行、絵画、骨董品、ブランド品・・・・・
「いつか銀座の高級クラブで一晩に100万使って豪遊してやる」という夢を持っている人もいることでしょう。
会社が儲かったら贅沢したい・・・。私もそう思っていました。
私たちは皆、贅沢という言葉に心惹かれるものです。その手のテレビ番組は後を絶ちません。その一方で、今、自分が贅沢をしていると自覚しますと幾ばくかの後ろめたさを感じることもあります。それが普通の感覚なのでしょうか。
何が贅沢なのかはみんな違うとおもいますが、普段より多くのお金を使うことが贅沢であるというイメージを持っている人が多いと思います。
中には、お金にまったく無関係な、例えば、心の贅沢を感じている人もいます。
私の知人で、親から譲り受けたものは、不動産などの資産ではなく、親の人脈だった方がいます。「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」ということも言われますが、まさにその通りの人です。
辞書には、贅沢とは、必要な程度をこえて、物事に金銭や物などを使うこと。金銭や物などを惜しまないこと。また、そのさま。限度や、ふさわしい程度をこえること。また、そのさまを言うようです。やはり日常生活の幅を超えたお金の出費のことを言っています。
日常生活も人それぞれです。極上のステーキを日常的に食している人にとって、本当においしい卵かけご飯が最高の贅沢だという人もいます。
日頃、100グラム98円の豚バラ肉しか食べていない人が、たまに食べるA5ランクの和牛を贅沢という人もいるでしょう。
でも、やっぱり、いつも食べている肉がいい。そう感じることもあります。
贅沢といわれている豪華客船での旅。家に着くと、ああ、やっぱり我が家が一番とつい、声を発することもあります。では、一番の贅沢は、我が家にいることなのでしょうか。
子どもにベビーシッターを雇うことが贅沢と感じる人もいます。子煩悩で・・・といわれている芸能人が、実は、頻繁にベビーシッターを雇っていたことは結構あります。
◆失敗しない贅沢
資産が増えれば贅沢をすることも可能です。一般の人はお金を手にするとまず贅沢を考えます。これに対して、お金持ちは、贅沢は最後に回すといわれます。
一般の人は自分にお金があることを心のどこかで見せびらかせたいと思っている人もいるようで、家や車、装飾品といった贅沢品を購入することもあります、一見お金があるように見えても、実際は借金地獄の場合も少なくありません。
クレジットカードやローンを使って車や贅沢品を購入して、今持っているものに飽きたらまた新しいものを買うといったことを繰り返していますと、確実にその借金という経済的負担が生活に重くのしかかってきます。
自分の血と汗の結晶である給料や借金をして贅沢品を買っていては、本当のお金持ちにはなれないということでしょう。
お金持ちはお金を手にしたら、最初に資産を築くといいます。そして、資産から生み出された収入で贅沢品を買います。
本当の贅沢とは、資産を増やした結果与えられるものでなくてはいけません。お金持ちになりたければ、贅沢品を買うのをぐっと我慢して、まずは資産を増やすことだということです。その選択が、のちにあなたをお金持ちへと導いてくれるはずです。
ちなみに自宅は収益を生みません。しかも維持費がかかります。その意味で負債だと考えることもできます。資産と負債では正反対です。この様な支出は、財務状況を悪化させることになります。
◆創業期を思い出せ
創業時は、個人より会社優先になります。私自身、最初の会社の創業時は、家賃1万5千円の風呂なし二階建オンボロアパートに引っ越ししました。入口は、住人の靴が散乱状態。トイレは共同。銭湯は遅く帰ると入れないため、翌朝、狭い洗面所で頭を洗い、背広に着替えて出勤。
アパートの暗いイメージが残り前向きに考えられないときは、新宿の京王プラザホテルに入り、ロビーのイスに10分程度座ってみます。海外の人も多く、なぜだか、気分が高まり事務所に出向くことができます。
創業時は、そのような日々で、とにかく、個人では余計な支出は1円も出せない。すべて会社に捧げる。そんな感じでした。
会社の創業期は、なかなか売上も上がらない為、資本の食いつぶしをするものです。このときは、社長も形は出資か貸付かは別ですが何とかして会社に資金を流入することになります。資本金も食いつぶし、借金まみれの社長も多いものです。
次号で、創業期から時系列で、社長が贅沢を出来る時期について考えてみたいと思います。
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