menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

採用・法律

第97回 従業員の情報も個人情報として保護されます!

中小企業の新たな法律リスク

 300人を超える従業員を雇用する小田社長の会社では、業務効率化のため、人事労務に関わる業務の一部を外部会社へ委託したいと考えており、最近話題のHRテクノロジーサービスの利用も検討しています。

* * *

小田社長:賛多先生、弊社もお蔭様で少しずつ成長しておりまして、当初は数人で始めた事業が、今や従業員は300人を超えるまでになりました。

 

賛多弁護士:小田社長が明確なビジョンを持ち、挑戦を恐れずに事業経営されてきたからですね。そして何より、小田社長が従業員を大切にされていることも、御社が安定的に成長されている大きな理由だと思います。

 

小田社長:ありがとうございます。 そうそう…従業員の管理に関して、少し検討していることがあります。これまで弊社では、勤怠管理や給与計算について、社内担当者がパソコンを使って行ってきました。ただ、従業員もかなり増えてきましたので、今後は社内業務を効率化するため、人事労務分野の外部サービスを利用しようと思っているのです。

 

賛多弁護士:最近は色々と便利なサービスがありますし、上手に活用されたら良いと思いますよ。どのような業務を外部委託しようと思われているのですか。

 

小田社長:実は2つありまして、1つは、勤怠や給与などの計算・管理業務です。もう1つは、従業員のモチベーションを向上させる施策の一つとして、人事評価制度を見直しているところなのですが、その中で人事評価をサポートしてくれるHRテクノロジーサービスを使ってみようかと思っています。

 

賛多弁護士:従業員のために新しいサービスを積極的に活用されるとは、小田社長らしくて素晴らしいです! ところで、2つ目のHRテクノロジーサービスはどんなものなのでしょう?

 

小田社長:あまり詳しいことはまだわからないのですが、従業員の勤怠情報や業務上の成績などの情報から、AIがその従業員の貢献度を分析するサービスのようです。

 

賛多弁護士:なるほど、最近話題になっている新しいサービスですね。いずれにしても、従業員の個人情報に関わりますので、個人情報保護法に留意いただければと思います。

1点目の勤怠や給与に関するこれまで社内でされていた業務を外部業者へ委託することについては、個人情報保護の観点から外部業者が適切な対応をしているかなどを確認してください。委託先の監督を行っていただくということです。

2点目のHRテクノロジーサービスは、「従業員情報の一部をAIに分析させる」という新しい試みのようですので、個人情報保護法上、委託先の監督だけでなく、従業員との間で従業員情報の利用目的を明確にしていただいたほうが良いでしょう。具体的には、例えば、「会社が取得した勤怠情報、業務上の成績を分析して人事評価のために利用する」などです。

 

小田社長:お~、そうですよね。なんとなく、従業員に対しては身内意識があって、会社が取得する従業員情報は人事管理上の目的のためなら自由に利用してよいという感覚でした。でも、当然、個人情報として扱わなければならないですよね。特にHRテクノロジーを利用して新しい取り組みをする際には、気をつけようと思います。

 

賛多弁護士:はい、従業員情報の利用目的について明示する際も、「人事管理上の目的」など抽象的な文言でなく、できるだけ具体的にしていただくことが大切です。
あとは、AIが分析した結果を実際の人事評価の補助(サポート)として利用される予定とのことですので、新しいサービスについて従業員の方が不安を抱かないよう、サービス導入の目的やサービスの内容を、会社側でまずよく吟味した上で従業員へ具体的に説明するなど、丁寧な事前対応を心がけていただければと思います。

* * *

 従業員情報も個人情報保護法で保護される個人情報に当たります。したがって、健康情報を含む膨大な従業員情報を取得・保有する企業には、従業員情報の取扱いについても、個人情報保護法や関連法令を遵守ことが求められます。企業がHRテクノロジーを利用する際には、上記のとおり利用目的を具体的に特定(※1)することや、外部業者へ従業員情報を提供する際の法的根拠(業務委託なのか第三者提供なのか)(※2)を確認することなど、サービス内容に照らして具体的に対応をご検討ください。


 また、HRテクノロジーは、サービス内容によっては労働法に照らした検討が必要になることもありますので、その点にもご留意のうえ、新しい技術・サービスを上手に活用していただければと思います。

 

※1「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
 3-1-1 利用目的の特定(法第17条第1項関係)」

※2「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
 3-6-3 第三者に該当しない場合(法第27条第5項・第6項関係)

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 加藤 佑子

第96回 本当は怖い偽装請負~労働契約の申込みみなし制度~前のページ

第98回 動く商標を登録することができるの?!次のページ

関連セミナー・商品

  1. 慌てない・もめない・負けない経営

    慌てない・もめない・負けない経営

  2. 大増税からオーナー社長を守るCD・DVD

    音声・映像

    大増税からオーナー社長を守るCD・DVD

関連記事

  1. 第22回 『民法債権法改正の賃貸借契約に及ぼす影響は?』

  2. 第1回 『働き方改革は強い会社を創るチャンス』

  3. 第56回 『早めの決断が関係者を守る、円満に廃業をする方法』

最新の経営コラム

  1. ローカル食品スーパー「クックマート」業績好調の裏にある「やらない戦略」とは?

  2. 第153回 動画時代なら簡単に解決!ルービックキューブ

  3. 第127回「市場の複雑化で存在感増す電子書籍卸のメディアドゥ」

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 人間学・古典

    第27回 「泣いて馬謖を斬る」 孔明の決断
  2. 社員教育・営業

    第134回 コミュニケーション上手になる仕事の進め方55「自分ではできていると思...
  3. 不動産

    第35回 「 ブランド沿線 」の「 ブランド駅 」に特化する方がリスクは少ない
  4. 協会便り

    Track4 講演録の聞き方 その道の専門家の講話から学ぶ
  5. マネジメント

    第103回 『こだわりを捨てる』
keyboard_arrow_up