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税務・会計

第36回【解説】電子保存の義務化、2年間猶予が確定|改正[電子帳簿保存法]

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 2022(令和4)年1月に施行される電子帳簿保存法の改正を直前に控えて、民間企業の電子データの保存環境が十分に整備されていない現状を考慮し、電子取引のデータ保存義務が2年間猶予されることが「令和4年度税制改正大綱」(2021年12月10日公表)に盛り込まれました。
 この変更により、今後2年間は、これまでどおり電子データを紙に印刷して保存することも認められます。
 そこで今回は、「企業の電子帳簿保存法の対応状況と電子データの保存の義務化が延期された理由」、そして「今後2年間で経理が取り組むべきデジタル化の準備」について説明します。

御社の経理は、電子帳簿保存法の対応ができていますか?

 

周知に遅れが目立つ「電子帳簿保存法」

 2022(令和4)年1月から施行される電子帳簿保存法の具体的な取り扱いに関して、国税庁から詳細が公表されたのは2021(令和3)年の7月でした。この時点で、運用開始まで半年を切っていたのです。
 電子帳簿保存法の対象範囲は、上場企業から個人事業主まですべての事業者が対象です。事業者数は3百万社以上あります。この短い期間で、日本全国のすべての企業に電子帳簿保存法について理解してもらうことは不可能でした。
 実際に、電子帳簿保存法改正の直前に行われた民間企業に対する複数の調査では、電子帳簿保存法の改正内容を理解していない企業が全体の半数以上を占めていました。特に中小企業においては、7割以上が「知らない」「詳細までは知らない」という回答でした。

御社の経理は、電子帳簿保存法の改正内容を理解していますか?

 

電子データ保存の義務化が2年間延期された理由

 電子帳簿保存法の改正を直前に控えて、企業の経理担当者が心配していたのが、「電子取引(電子請求書や電子領収書)の原本データの保存義務」についてでした。
 なぜなら大半の企業では、電子データで受け渡しされた請求書や領収書を、法改正に則って電子的に保存する準備が整っていなかったからです。
 一方で電子帳簿保存法の改正内容を理解していても、対応が間に合わない会社が多かったのが事実です。
 その要因には、主に次の3つが挙げられます。

[対応が間に合わない要因①]
長い間、紙の書類で管理してきたのに、急に電子データの保存を要求されても対処方法がわからない。

[対応が間に合わない要因②]
社内の業務システムに、電子データの管理機能が備わっていない。または、システム会社の開発対応が追いついていない。

[対応が間に合わない要因③]
電子データの管理システムを、導入するための資金と時間がない。

 これらの様々な要因が重なり、すべての民間企業が半年以内に電子化対応することには無理がありました。
結局、電子帳簿保存法の改正を直前まで知らなかったほとんどの中小企業においては、準備も対応も間に合いませんでした。
 こうした状況を踏まえて、財務省と国税庁は電子取引データの保存の義務化を2年間延期したのです。
 なお、電子データの保存ができないことについて、税務署への申請や届け出をする必要はありません。

御社の経理は、電子帳簿保存法の対応をどのくらい済ませていましたか?

 

利便性か、罰則回避か? 電子化を抑制しては本末転倒になる

 政府は、今回の電子帳簿保存法の改正で企業の電子化の促進を目的にしていました。しかし現実には、電子化とは逆方向に舵を切った会社も少なくありませんでした。
 電子取引データを規則どおりに保管していない場合には、税務調査で経費を否認したり青色申告を取り消したりする厳しいペナルティが規定されていたからです。
 法律で規定された電子データの厳格な保存方式の適用が、徐々に普及し始めた電子取引の流れを逆戻りさせる結果になったのです。
 電子請求書の運用を開始していた会社でも、電子帳簿保存法改正後の電子データ保存の不備を恐れて、電子取引をやめてしまうケースも見られます。
 たとえば、こういう会社があります。メールにPDF形式の請求書を添付して送信してきた取引先に対して、「請求書はすべて紙に印刷して押印後に郵送するように」と変更を依頼したのです。つまり、電子取引を拒否するようになってしまったのです。
 電子化を促進するための法改正が、電子化を抑制させてしまっては本末転倒です。

御社は、利便性向上と罰則回避のどちらを取りますか?

 


今後2年間で「電子インボイス」の準備をする

 電子帳簿保存法改正にともなう電子データの保存義務は2年間猶予となり、実質延期されました。この「2年」の猶予期間は、2023年10月からの消費税のインボイス制度の導入を見据えて設定されています。
 インボイス制度により事業者が発行する請求書や領収書の様式が変わります。2年後のインボイス制度の導入に合わせて、電子インボイス(電子請求書や電子領収書)への移行が見込まれていることを覚えておいてください。
 今回の電子帳簿保存法の改正では、周知期間や準備対応期間が短く、民間企業側の対応が間に合いませんでした。
国税庁も2年後は、もう待ってくれないでしょう。
 今後2年間は、紙と電子を併用しながら、段階的に電子化を進め、社内の管理体制やシステム対応を準備していかなければなりません。そして2年後のインボイス制度の導入までに、電子インボイスに対応した経理体制を構築しておきましょう。

御社は、2年後のデジタル化した経理のイメージはできていますか?


*[消費税インボイス制度]については、第31回のコラムでも説明しています。そちらも参考にしてください。
第31回 10月1日[消費税インボイス制度]登録申請スタート


【参考】
「令和4年度税制改正大綱」2021年12月10日(自由民主党 公明党)
https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/202382_1.pdf

「電子取引データの保存方法をご確認ください」国税庁
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0021011-068.pdf

「電子帳簿保存法に関する意識調査」Sansan株式会社
https://jp.corp-sansan.com/news/2021/0831.html

「電子帳簿保存法改正とペーパーレスに関する調査」freee株式会社
https://corp.freee.co.jp/news/20211202anke-to.html

「電子帳簿保存法に関する意識調査」株式会社ラクス
https://www.rakus.co.jp/news/2021/1025.html

 

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