前回、「4.席次」についてお話しました。今回は「5.美味しいお茶の入れ方」と「6.丁寧なお見送り」についてお話します。
5.美味しいお茶の入れ方
コロナ禍により、来客応対でのお茶の出し方は多くの会社でペットボトルに、あるいはお茶はお出ししないという流れに変わりました。コロナについては今年の5月にインフルエンザと同じ「5類」扱いになり、ある程度コロナ禍以前に戻ってきていると感じています。このお茶のおもてなしは、来客の方が早期に社員教育の出来ている会社がどうかの判断ができる材料にもなる場面です。改めて復習をしましょう。
① 準備
茶わんの内側の茶渋の汚れとひびの点検をします。私は茶渋が茶碗の内側に線になって残っているのを実際体験しております。「ひび」も私体験しましたが、ひびを超えて唇の当たるところが小さく欠けていたこともありました!
さらに注意点として、社員に用意する茶碗はお客様と同じものにします。両者が同じ容器で同じ飲み物をいただくー「一味同心」という言葉がありますーことに大きな意味があるのです。間違っても○○さん愛用のマグカップなど、お出しにならないで下さい。お使いになるのはあくまで茶碗と茶托のセットです。会社によっては謙虚さからなのか、自分たちの分は茶托を使わず茶碗だけ同じものになさる場合がありますが、必ず同じセットをお使いください。
2 入れ方
お茶の濃さにはそれぞれ好みがあると思いますが、マナーの観点からは「同じ濃さ」でお出しするのがよいとされています。そのため例えば3人のお客様用として3つの茶碗「1・2・3」にお茶を注ぐ場合は、(この時茶托はまだセットしません)注いでいる間に急須の中のお茶が濃くなりますから、「1」に少し・「2」に少し、「3」に少し注ぎます。次は逆バージョンで「3」に少し、「2」に少し、「1」に少し注ぎます。これで3つの茶碗の濃さが同じに出来上がります。茶碗に注ぐお茶の分量の目安は約7分目です。出された側がその量を見たとき、ほど良い量に感じます。なお、急須に煎茶の茶葉を入れて(大匙2杯位)注ぐお湯の温度は80~90度位です。先に茶碗にお湯を注ぐと温度が低くなるので、このお湯を急須に入れます。温まった茶碗はお茶がさめにくくなるため、一石二鳥です。
③ 運び方と入室
お盆に木目が見える場合、木目の流れを横になるように持ちます。これは相手に尖ったものを向けないという細やかな配慮です。お盆の上に、お茶が注がれた茶碗「1」・「2」・「3」を並べ、茶托は3つを重ねます。
持ち方は両手で、アンダーバストの位置。ただ自分の息がかからないように、少し左右のどちらかにずらして持ちます。
部屋の前で静かにノックをして入室し、お盆の位置を下げないように気を付けて一礼をします。お盆は室内のサイドテーブルに置きますが、サイドテーブルがなければテーブルの下座側(出入口のドアに近い場所)に置いてもかまいません。
④ 出し方と退室の仕方
お茶をお出しするタイミングは、お互いのご挨拶が終ったころ頃です。お出しする順番は、「4.席次」の通りです。サイドテーブルかテーブルの下座側のお盆の上で茶碗と茶托をセットし、両手で持ってお客様の後ろに立ちます。そしてお客様の右斜め後ろから会話の邪魔にならないような声量で「失礼いたします。」・「お熱いうちにどうぞ」などのお声かけをしながらお出しします。
この段階では、すでに名刺交換がすんでいて名刺がテーブルに並んでいるでしょうから、セットしたお茶のお出しする場所は少しずれるかもしれません。だからといって訪問者の書類などを勝手に移動することはNGです。また、資料などでテーブルの下座側にお盆を置くことが出来ないときは、左手だけでお盆を支え「片手で申し訳ございません」と言葉を添えて、右手でお茶をお出しします。茶碗の正面がお客様に向くように置けているかの確認もしてください。出し終えたら、お盆は自分の身体のドア側の脇に持ち、静かに出口で一礼後退出します。
ここまでの流れの中で、どの位の心遣いに基づいた動作がなされていると思いますか?短時間に10回以上の心遣いを感じませんでしたか?相手を思っての行動ですが、お茶のおもてなしはまるで心遣いのミルフィーユのように思えます。
過去の新人研修において、男性社員の方が本当に驚いたようにおっしゃった言葉を今でも鮮明に覚えています。「先生、一杯のお茶をお出しするだけにこんなにたくさんの心遣いが込められていたのですか!僕は出されたお茶に対して今まで何も考えずに飲んできました。まだすぐに会社訪問が出来るわけではないので、それまでは家族に入れてもらったお茶にもたくさんの感謝をして飲むことにします。」この方が今後、会社訪問をする機会を持ち、お茶を出されたときはきっと心からの感謝をなさりながらお飲みくださるにちがいないと嬉しく感じました。
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