このたびの東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧・復興のために日本中のモノづくりにかかわるみんなで助け合い支えあってこの難局を乗り切りましょう。
先回まで「最強のモノづくり」におけるレベル2の「工程間の流れ」について、品質と段取り替えの改善を中心にお話しして参りました。
レベル0:ダンゴ生産
レベル1:工程内の流れ
レベル2:工程間の流れ
レベル3:工場内の流れ
レベル4:工場間の流れ
レベル5:お客様への流れ
レベル6:一気通貫の流れ
そして、先回を「レベル2のまとめ」と申し上げたのですが、品質と段取り替えの改善をした結果を基に、どうやって流れを作るのかをお話ししておりませんでした。申し訳ありません。
そこで、今回でレベル2のまとめといたします。
さて、工程間の流れを作るためにはそれぞれの工程と工程の間をどうつなぐかを決めなければなりません。
単品種の生産であれば、段取り替えの必要がありませんから生産ロットをできるだけ小さくして、中間製品の停滞を少なくすれば流れが良くなります。
しかし、品種が多い場合で、かつ中にプレスや射出成形のようなロット生産せざるを得ない工程があると、流れを作ることは途端に難しくなります。
この工程間のつなぎの問題に対する定石として、「カンバン」の活用があるでしょう。「トヨタ生産システム」にある、在庫と対応する「カンバン」と呼ばれるカードを使って生産指示を行うカンバンシステムは、自動車関連のお仕事をされている方にとっては既に当たり前になっているかもしれませんが、それ以外の業界ではあまり使われていないことが多いのです。
理由は、自動車産業のように高いレベルの平準化を前提とできる業界は他にはなく、カンバンの活用が容易ではないからです。
ですから、私はすべての業界の方にカンバンをお勧めすることはしませんし、むしろそれが自動車業界であってもカンバンを使わない方法を考えることの方が多いです。
というのは、どの順番で後工程が前工程で作られたモノを引くかが分からないので、スーパーマーケットの棚のように売れた商品を順次補充するやり方を工場現場でも実現するということでカンバンの活用になったのですが、実際の現場を見ると、実はその日の出荷順番はすべて前もって分かっているということがほとんどです。
そうであれば、生産順序計画を作ってそれを全員に伝えて、みんなでうまくつなぐためのタイミングなどを話し合って計画を実行する方が、より少ない在庫でうまくいくことがあるのです。
その時には、前工程のエンドに少しだけ早めに作った中間製品を置いておいて、後工程の人が必要に応じて取りに行くという「後工程引き取り」を実行することが大切です。
ここで重要なのは各工程のリーダー全員が全体の流れを把握していることです。そこで私がお勧めしているのが毎日夕方にリーダー会議を開くことです。そこでは二つのお約束の質問があります。一つは「今日、どうだった?」、もう一つは「明日、どうする?」の二つ。
最初の質問がP-D-C-AサイクルのDとC,そして次の質問がAとPです。そして明日のリーダー会議の最初の質問は、昨日の「明日、どうする?」で決めたことに対しての「今日、どうだった?」ですから、これで見事にサイクルが回ることになります。
これから日本中が災害復興に向けて大きなチャレンジをすることになります。その時に少しでも資金を速く回して、キャッシュの枯渇を起こさないためには在庫の削減が大切です。
今回お話しした工程間の流れがきちんとできているかを調べて、更なる改善を実行しましょう。
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