昨年2025年は、「AIエージェント元年」と言われているそうです。それは、「AIエージェント」が機能するための技術が飛躍的に発展したり、企業への導入が進んだり、ルール作りへの取組などが本格化に始まったりしたからです。それにともなって、私たちが「AIエージェント」という言葉を耳にする機会も増えました。「AIエージェント」は、ユーザーの目的を理解し、それを達成するために自律的に行動するシステムのことです。
具体的に「AIエージェント」は何ができるのでしょうか。また、「AIエージェント」が普及することで、私たちの仕事や生活は、どのように変わるのでしょうか。先端ITビジネスに詳しく『AIエージェント』(日経文庫)の著書もあるEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジーコンサルティング ディレクターの城田真琴さんにお話しを伺いました。
●「指示待ち」から「自律的な行動」に進化
――まずは、AIエージェントとは何かを簡単に教えてください。生成AIとどう違うのでしょうか。
これまでの生成AIは、プロンプト入力しなければ動かない指示待ちで受け身の存在でした。それに対してAIエージェントは、曖昧な指示でも、意図を汲み取り、自律的に行動して結果を返してくれる。これが大きな違いだと思います。
―― AIエージェントが注目されるきっかけは、あったのでしょうか。
世の中的には、AIエージェントがいきなり出てきたように見えるかもしれませんが、その前段階にAIアシスタントがありました。
――AIアシスタントとは?
AIアシスタントは、文字通りアシスタントで、下書きみたいなものを作ってくれる。それに対して人間が「これでいい」と承認すると、次のステップに進み、また何かあると、人間に承認を求める。このように工程ごとに承認行為を繰り返して、最終的なゴールにたどり着く。そんなイメージですね。世界には多様なAIベンダーがあり、それぞれ自分たちのソフトウェアを「AIアシスタント」から「AIエージェント」へと進化をさせた。このような積み重ねによって、今に至ったとご理解いただくのがいいかなと思います。
――具体的にAIエージェントは、どんなことをしてくれるのでしょうか。
AIエージェントは、設定したゴールに向かうためには、何をすればいいかを考え自律的に動きます。たとえば、メール対応なら、緊急性の高いものをピックアップして、すぐ対応できるように数パターンの回答まで用意してくれる。メールに限らず、出張の手配、会議の準備など、優秀な秘書のようにテキパキと仕事をサポートしてくれます。
――そのような優秀な秘書が現れるのはずっと先の話だと思っていましたが、ご著書『AIエージェント』を拝読して、ほんの数年先の話だと知って驚きました。どの企業もかなりのスピード感をもってAIエージェントの導入に取り組まなければならないと思いますが、実際は、どのようなステップで普及していきそうですか。
これまでのITの導入と同様に、大企業の導入が先行して、そのあとに中小企業への導入が本格化していくと考えています。海外では、「AIに仕事を奪われる」といった話が現実的なものと受け止められていますが、日本の場合は事情が異なります。もちろんそういう話も一部の職種ではありますが、中小企業の場合は、労働力不足が顕在化している企業が多いので、労働力不足を補う手段としてのAIやAIエージェントというものが非常に役立つと考えています。
――実際に導入されると働き方は、どのように変わっていくのでしょうか。
数年後の世界では、実際に手を動かしていた作業の大半はAIやAIエージェントに任せて、人間は基本的には「AIエージェントがやった仕事が意図した形でできているかどうかを確認したり、例外が発生した時の処理などを担当する。そんな世界が訪れるまで、それほど時間はかからないと思います。
――すでにAIエージェントが導入されているのは、どんな仕事なのでしょうか。
コンタクトセンター的な部門での導入は一部の企業で始まっています。お客様からの問い合わせに対して、大半はAIが答え、例外的な質問に対しては人間にエスカレーションするといったやり方ですね。また、AIは、手書きの文字もほぼ認識できるようになったので、消込作業など請求書の処理に使うところもでてきました。人間が手伝うのは読めない字があるときくらいです。
――AIやAIエージェントの導入によって、どのくらい成果が上がるのでしょうか。
定量的に表現するのはなかなか難しいのですが、たとえばコールセンターなら、AIエージェントの導入によって、これまで一件当たり10分かかっていたものが半分の5分になる。なおかつ待ち時間が短くなり、お客さまの満足度も上がる。実際、そういう成果がでているところもあります。
――AIエージェントには、いくつかのタイプがあるようですが。
大きく分けると3タイプあります。一つは特定の業務に特化した「AI専門職」。定型的な仕事や半定型的な仕事を代わってやってくれます。例えば、営業なら見込み客の管理や初期アプローチ、アポイントの調整、CRM(顧客関係管理)への入力といった業務をやってくれます。カスタマーサービスの部門なら、顧客からの問い合わせに24時間365日対応。マーケティング部門なら、販促活動の効果をリアルタイムで分析したり、市場のトレンドを分析して新たな提案をしてくれたりします。すでに、そういったツールがセールスフォースなどから出ているので、導入を開始している企業もあります。
――デジタル執事というのは?
個人を支援してくれる秘書のようなイメージです。具体的には、個人の予定を適宜教えてくれたり、メールで送られてきたミーティングの予定をスケジューラーに登録してくれたり、プレゼンの資料を揃えてくれたり、ずっと使っているうちに、本当の人間の秘書のように、パーソナライズされた形での対応をしてくれるようになる。
――まもなく、そうしたデジタル執事を全員が持つ時代がやってくるわけですね。
すでに一部の先進的な企業では、入社した時から、一人1台、デジタル執事がつくということをやっています。もちろん、非常に先進的な話で、大半の企業は、まだまだです。
――3つ目のAI株式会社というのは?
かなり先の話になると思いますが、複数の専門職AIエージェントがチームを組んで、自律的に組織を運営していく。そんなAIが運営する法人を意味しています。

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