リーマンショックと世界同時不況突入から4年半が経過した。当初、欧米だけでなく世界中の政府と金融当局が、大型の財政出動や金融緩和を行ったので、特に米国では「日本の失われた10年の二の舞にはならない」との期待があった。
しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)が失業率5.5%に低下するまで、金融緩和措置を維持すると改めて表明したように、欧米経済もV字回復を果たせなかった。また、欧州重債務国問題も、ユーロ解体に追い込まれることは回避できそうであるが、根本的な解決策が示されないまま危機的状況の長期化が懸念されている。
最近の金融市場はこれまで以上に変化も速く、振幅も激しくなる傾向だ。しかし、これはグローバル化の進展による当然の帰結であり、今後はこれが通常の状態になると考えられている。従って、私たちのライフ&マネープランも、激変する社会経済や金融市場を前提条件に、これらの不確実性に耐えて失敗しない計画にしなければならない。
また、国家レベルで考えれば、日本が近年貿易赤字に転落して、『成熟した債権国』として貿易立国政策だけの限界に突き当たり、解決策の一つとして金融立国政策が示されている。投資立国、金融立国として成功するための大切な要素が、国民の金融経済知識の向上という課題になる。もちろん社会全体の金融経済知識は一朝一夕に向上するものではない。学校教育や社会教育も含めた広範な活動を、何世代にもわたって地道に取組んでこそ実現できるが、先ず国民一人一人が身の丈に合ったマネープランを始めることが重要だ。
そうなれば将来、高齢者の未公開株詐欺被害も減るだろう。勘違いという意味では、30~40歳代の資産形成層が、老後資金づくりの目的で毎月分配型投信を購入することや、時間を味方にする投資手法に気付かず、一時に資金を投入し痛手を負う資産運用方法などが改善されるはずだ。(注。運用効率を上げるためには分配毎に課税される毎月分配型は不利で、無分配の再投資型が有利)
私たち個人投資家も、基本的な長期分散投資の手法をマスターして、自分の身近な人に対して資産運用に関する自分の経験や知識を伝えて、金融立国のインフラ整備に一役買うべきだ。正しい金融経済知識を持って資産運用に取組む仲間が増えることは、世界と日本の経済に新たな資金と刺激を与え、それが個人の運用成果となって表れる好循環に繋がると期待したい。
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