「日本を代表するモノといえば、自動車や家電製品」と世界中が認めるように、
日本は原材料を輸入し製品を世界各国へ輸出する貿易立国により、世界第2位の経済大国になりました。
しかし、少子・高齢化社会になった現在では、労働力の確保が難しく、
製造拠点を中国やベトナムなど海外に移す企業も少なくありません。
モノづくり大国と呼ばれた日本ですが、このような社会構造の変化を数字上でも確認することができます。
従来の日本では、貿易収支の黒字額が、所得収支(海外投資に伴う配当や金利収入などから
海外への支払利子や配当を引いた収支)の黒字額を常に上回っていました。
しかし、2005年度には、「所得収支」は約11兆3,800億円の黒字となり、
「貿易収支」の黒字約10兆3,300億円を初めて上回りました。
この状況は、製造業で支えられていた「貿易立国」の日本が、
社会構造の変化や巨額の金融資産の蓄積を背景に「金融立国」へと変わり始めた現象です。
1996年から始まった日本版ビッグバン(金融制度改革)によって推進された
「貯蓄から投資へ」の政策効果の表れとも言えます。
2007年度は、「所得収支」約16兆2,700億円に対して、「貿易収支」約12兆3,700億円とその差はさらに広がり、
日本が金融立国へと突き進んでいる状況を裏付けています。
このような時期に企業経営者に求められることは、日本が直面している変化を感じ取る鋭敏な感覚と、
それに対応するための判断力です。
従来の経営方針を守りつつも環境変化に順応するための経営戦略が求められます。
国策として推進されている「貯蓄から投資へ」の流れが進むと、
自社の属する地域経済や業界にどのような影響があるのか検討しなければなりません。
金融市場の変化は、いずれ自社の資金調達、メーンバンクなどの融資姿勢にも影響を与えることでしょう。
また、経営者個人のお金はもちろんのこと、会社のお金にも働いてもらう仕組み(資産運用)も必要になります。
そのためには、従来会社に整備されていなかった資金運用方針や資金運用計画を定めるとともに、
日頃から金融知力を高める努力も不可欠です。