「部下を持ったら、自分の哲学・座標軸をもて」とか、
「部課長たるもの、部下に方針を示せ」などといわれる。
そのためだろうか、
「日本でいちばん大切にしたい会社を目指そう」「生産性を高めよう」などと
部下に訓示をたれる、部課長を見受けることがある。
部課長と一般社員との違いがどこにあるかといえば、
広い観点から仕事を見ることができるかどうかに尽きるといってよい。
経営者視点を身に着けているか否かと言い換えてもいいいだろう。
とはいえ、部課長レベルにおいて求められるのは、
具体的なハウツーや仕事への取り組みの優先順位の指示であって、
「日本でいちばん大切にしたい会社を目指そう」といった
抽象的な概念の提示ではない。
近代日本資本主義の父・渋沢栄一翁の名言:
『右手に論語、左手にソロバン』にならえば、
『右手に理念、左手にハウツー』ということになるが、
部課長レベルでは、よりハウツーにウエイトを置くべきである。
たとえば、「生産性を高めよう」という場合、
目標とする売上げ数字をあげるのはもちろんだが、
利益率は何%を目指すのか、シェアは、一人当りの売上は、歩留り率は…
という、様々なレベルで具体的な数字を示すことが必要になってくる。
さらには、
目標とする数字を決められたら、それを空理空論で終わらせないために、
営業マンの取り組みなどについて、具体的に指示を出すことになる。
営業を強化しようとするならば、ひと月に一度は営業マンに同行して、
(1)事前の準備 (2)セールストーク (3)態度
(4)接客の締めくくりに関してアドバイス・指導をおこなう・・・
といったような具体的方法論まで求められることもあろう。
自動車や住宅は、青写真や設計図なくして作れはしないが、
工程表なくしても、これは不可能である。
部課長レベルでは、その工程表や作成に基づいた行動に関して
リーダーシップを発揮することが肝要である。
取締役などの重役幹部と部課長などの中間管理職の役割の違いを
もうひとつあげるとすれば、部課長には、
部下の日常の行動基準について、具体的に指示することが求められる。
「会議には5分前集合」「レポートは2枚以内にまとめる」
「留守中に入った伝言には24時間以内に返答をする」・・・。
細かいと思われるかもしれないが、
こうした行動基準が部や課の全員に共有され、
それが行動に移されてこそ、会社は活性化されるのである。