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マネジメント

第131回 『分散化のメリット』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

 
私が社長を務めたジョンソン・エンド・ジョンソン社は、
約130年の歴史をもつ多国籍企業。
現在、世界60ヵ国、グループ128千人・250社で活動を展開しており、
その経営コンセプトの柱の一本を成しているのが、「分散化」の概念である。
 
では、「分散化」とは何か?
 
これは、企業の一部門の業績が伸びて規模がある程度大きくなり、
売上高も社員の数も増えてきたときに、その部門を独立したひとつの事業部にしたり、
あるいは、切り離してひとつの会社として独立させることをいう。
 
そもそも「分散化」には、どんなメリットがあるのだろうか?
ジョンソン・エンド・ジョンソン社をひとつのケースとして説明を続けたい。
 
第一に、
会社ごとに独立したマネジメントチームができるので、
おのおのプロフェッショナリズムの開発がしやすくなる。
 
第二には、
個々の会社の成長と一致した、個人としての成長がしやすくなる。
 
第三に、
高度の専門性が培われるため、顧客ニーズを把握し、
責任ある対処をとりやすくする。
 
第四に、
あれもやり、これも手掛けるというスタイルではなくて、
限られた分野での活動であるため、秩序ある成長がマネージしやすくなる。
 
第五として、
個々の会社の規模はそれほど大きくても、
社長以下いろいろな管理職が生まれるため、
経営者をはじめとする管理職レベルの人間が育ちやすくなる。
 
何といっても「責任」のある仕事を任せてやるくらい、
人を育てるのに効果的な方法はないわけで、
「分散化」経営では、責任をもたせて経営にあたらせるため、
各自、とくにマネジメントの人材開発がおこないやすい。
 
そこで、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の哲学公式は、
『分散化すれば創造性が生まれる、創造性が生まれれば、生産性に結びつく』ということで、
このふたつの方程式の共通項である「創造性」を省くと、分散化イコール生産性である、
ということになる。
 
文章のカタチでは、
『我々は(分散化による)小さいことのメリットによって、会社としては大きくなった』
という、面白い表現になる。
 
 
もちろん、「分散化」には、「権限委譲」の概念も含まれる。
 
アメリカの企業の例だが、秋のキャンペーン・ポスターのデザインの承認に至るまで、
NY本社にお伺いをたてなければならないというところがあって、
実際に承認が下ったのは冬であったという。
 
これでは、カタチのうえでは「分散化」ができていても、実際には、
そのメリットを十分使いこなしているとは言い難い。
 
 
ただ、ここで「分散化」と「分散化のメリット」だけを並べたが、
反対の概念である「中央集権化」にもそれ相応の優れた点があるので、
単純に「分散化」「分権化」が完全であるという見方から、
この問題に関して語っているわけではない。
 
要は、どのコンセプトが自社に一番適しているか、したがって、
どちらを信じて実施するか・・・の選択の問題である。
 
たまたまジョンソン・エンド・ジョンソン社では「分散化経営」方針を採用し、
その結果、世界一の健康関連企業の座についたわけである。
 

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