※本コラムは2000年代に井原隆一氏が書き下ろした「不況は会社守成の好機」全41話のコラムを再連載するものです。
“老馬の智、用うべし”
この言葉は、韓非子にあるもこの由来は春秋時代にさかのぼる。
斉の桓公が名宰相管仲と隰朋(しゅうほう)を従えて、小田、孤竹を攻めたときである。往路は無事であったが、帰路は冬になり道に迷ってしまった。
そのとき、管仲が年老いた鳥は本能的感覚で道を探しあてるものだ。それに従って老鳥を列から放したところ、しばらくしてある方向に歩き出した。それについていくともときた道に戻ることができたという。
また一行が山道をすすんでいる時、飲み水がなくなり歩行も困難になってきた。この時、隰朋が、蟻は、冬は山の南側に、夏は北側に巣を作るという、その蟻塚の下には水源があるという。掘ってみると水源を掘り当てることができたという。
この話の意味は、どんなつまらぬ人からでも役立つ智恵は得られるものだ、ということである。また、全く役立つとは思われないことからも新たな智恵が得られるものである。
ニュートンはりんごの落ちるものを見て、地球の引力を知ったといい、作曲家の古賀政男さんはキセルの羅宇屋の笛の音を聞いて、“影を慕いて”の名曲を作り、ビールの瓶詰め工場から
回転寿司を開いたという。
私の失意貧困を救ってくれたのは、漢書にある
“淵に臨みて魚を羨むは、退いて網を結ぶに如かず”の一句であった。また私に、処世、経営の基本を教えてくれたのは夜学当時の“十八史略抄本”七十四の小冊子であった。
※栗山英樹氏から、本コラム井原隆一氏の「人の用い方」書籍と、井原隆一「人の用い方セミナー」収録講演CD版・デジタル版を推薦いただきました!
監督の仕事は、選手の心を動かし、勝利の高みに導くことです。人をいかに用いて、信頼感を高めるか―――
その答えを求めて、私は井原さんの「人の用い方」のCDを5年間、毎日球場までの往復2時間、車の中で聴き、本をカバンに忍ばせていました。選手は勝利のために厳しい練習をしているわけですから、私は素振りの代わりが勉強だと思っています。