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万物流転する世を生き抜く(6) 敗戦に学ばぬローマ軍

指導者たる者かくあるべし

 トレビアの会戦で敗北しカルタゴ軍の騎兵の威力を思い知らされたローマ軍だが、半年後の紀元前217年春、増援軍の到着を待ってハンニバルを前後から挟み撃ちにしようと試みる。
 
 情報戦でまさるハンニバルのこと、四方に放った間諜からの情報で敵の意図を見抜いていた。
 
 トラシメヌス湖畔の林と湖水に挟まれた狭隘地で追撃するローマ軍を兵を隠して待ち構え、三方から囲んで湖に追い落とす。挟み撃ちの失敗を知らぬ敵の正面軍を撃破した。
 
 フラミニア街道をそのまま南へ向かえばローマまで三日の距離。連戦連敗の報にローマ市民のだれもが、都城に迫るカルタゴ軍の影に怯えた。
 
 ところがハンニバルの取った行動は意外なものだった。ローマをつかず、そのまま半島の東岸へ出て南下したのだ。
 
 ハンニバルは当初から、ローマを地上から葬り去る大戦略を秘めていた。
 
 「ローマを包囲して講和を迫ることはたやすい。それではローマという国は落ちない」
 
 都市国家のローマは、イタリア半島内外の諸都市と同盟関係を持ち、さらに各地に市民を入植させた植民都市を経営している。ローマを取り囲んでも、後詰めの同盟軍、植民地軍に背後をつかれては5万の軍ではローマを滅亡には追い込めない。
 
 ローマと諸都市との同盟関係をぶち壊す。急がば回れと考えたハンニバルは、勝利のたびにローマ市民兵は捕虜とし、同盟軍の兵士は国元へ返した。
 
 「ハンニバルは寛容な男だ。敵はローマだけらしい」と同盟都市内で宣伝させ、ローマからの離反を目指した。
 
 略奪しながら南下しては味方を増やすハンニバル。会戦ではかなわぬと見たローマ軍は、正面戦を避けてハンニバルをつかず離れずで追尾、監視する。奇妙な膠着状態が一年にわたり続く。
 
 半島内で敵の略奪を傍観するだけのローマ軍に市民の間から不満が募る。
 
 ローマの世論を聞き知って「機は熟した。もはや敵は逃げない」と見たハンニバルは中部イタリア、カンネーの地で5万の兵を布陣させる。受けて立つローマ軍は8万7千。ローマ軍を指揮する執政官ウァロは、数の優位を見て、勝利を疑わなかった。
 
 だが、相変わらずの重装歩兵頼みの自軍の布陣に危うさを感じる若者がローマ軍にいた。
 
 緒戦からローマ軍を無惨な敗戦に導き続ける憎き敵であるハンニバルの戦術を学び続けてきた若者の名はスキピオ。弱冠十九歳だった。
 
 カンネーの平原に吶喊(とっかん)の声が上がり、両軍の前衛が激突する。 (この項、次週へ続く)
 
 
 ※参考文献
 
 『ローマ建国以来の歴史5』リウィウス著  安井萠訳 京都大学学術出版会
 『歴史1』ポリュビオス著 城江良和訳 京都大学学術出版会
 『ハンニバル 地中海世界の覇権をかけて』長谷川博隆著 講談社学術文庫
 『ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記』塩野七生著 新潮社
 
 
 
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  著者/宇惠一郎 ueichi@nifty.com 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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