この数字は、経産省が推進する認知症予防実証事業に関する19年度の予算額である。これは、経産省が日本医療研究開発機構(AMED)と協力し、認知症の予防に効果的な製品やサービスを創出するため、研究者や健康食品会社をはじめとする民間事業者から、予防・治療に効果が期待できる素材をはじめ、知機能低下の予兆検知や意思疎通を円滑にする生活支援機器・サービスなどを公募。選出したものを研究開発課題として捉え、実証実験を行っていくプロジェクトである。期間は2019年からの3年間で8件程度の事業化を目指しており、AMEDより1課題当たり、年間1,000~2億5,000万円の研究開発費が提供される。
現在、日本の認知症患者数は約500万人で、65歳以上の高齢者の7人に1人と推計されている。さらに認知症の前段階と言われる軽度認知障害と推計される400万人を合わせると、高齢者の約4人に1人が認知症あるいはその予備軍ということになる。
“超々高齢化”が進展する日本にとって、認知症数の増加抑制は喫緊の課題であり、経産省では、認知症の対応として創薬研究や医療・福祉機関の取り組みに加えて、幅広い生活関連産業の巻き込みや新事業を活用する取り組みを加速させている。薬による治療だけでなく、認知症のリスクを低減・予防する製品・サービスや、認知症になってからも尊厳を保持して、その能力に応じて自立した日常生活が送れるように支援する質の高い製品・サービスの創出を促して、着実に社会実装していくことが重要としている。
また一方で経産省は、昨年10月「認知症官民連携実証プラットフォーム」を開設し、認知症の予防や生活支援に関する情報を募集している。大学や公共団体、製薬会社をはじめとする様々な業種の企業が専用サイトに登録しており、認知機能の探索、リスク低減・予防、進行抑制、自立支援の提供などについて広く情報が集まっているようだ。
これから高齢化がさらに進み、団塊世代が75歳以上になる2025年には、認知症患者数は約700万人に達する見込みである。認知症を予防するエビデンスがある健康食品や機器、サービスの市場は、今後、日本社会の切実な要請として拡大していくことになる。