★大衆が虜になるヴィンテージ古着の魅力
生活者が感じているヴィンテージ古着の魅力には、どんなものがあるのでしょうか。
①流行に追われない、こなれたデザインで古くならない(古いから良い、古さこそが価値)
ヴィンテージ古着の最大の魅力は、それ自体が古いことが価値となる点です。そのため、流行に左右されず長く愛用することができます。
古着は現代では生産されないこなれたデザインで、しかも個性を表現することができるアイテムとして重宝されています。特にアメリカやヨーロッパなどの欧米のヴィンテージアイテムは、サイズが大きめのものが多く、トレンドよりも自分の体形や好みに合わせて選ぶことができるのも魅力のひとつと言えるでしょう。
②劣化せずに引き継がれた良質な素材で、お気に入りを補修して着つづける丁寧な暮らし
劣化せずに50年も100年も残り続けているということは、良い素材を使っているということ。大量生産・大量消費モデルの現代ではなかなか手に入れられないような丁寧なつくりの服を、ほつれたりボタンが取れたりしたら大切に補修しながら着続ける、サステナブルで丁寧な暮らしも楽しみの一つです。
古着でしか手に入らない、今はもう作れない手の込んだボタンや、手の込んだ刺繍、今は生産コストが高騰してしまったり規制がかかったりなどしてもう使えない希少な生地や素材などを見つけられることにも、一期一会の宝探しのような楽しみがあります。
前の持ち主の名前が英語で書かれていたり、魅力的なリメイク加工が施されたものがあったりなど、前の使用者との縁を感じながら引き継いでいけることも一点物の魅力です。
筆者私物の1950年代のアメリカのヴィンテージワンピース。70年前の品とはとても思えない状態の良さ
写真提供・販売元:高円寺Barnet(東京)https://www.instagram.com/bernet_vintage/
◉ヨーロッパやアメリカの品の良いヴィンテージワンピース、スカート、ブラウスが揃う。Instagramに載ると即完売するほどの人気
筆者私物の1970年代ケニントンのニット。ニットの中に、ミッキー&ミニーの刺繍が施されている
筆者私物の1960年代のアメリカのヴィンテージワンピース。凝ったボタンとデザインがキュート
写真提供・販売元:中野リトルバード(東京)https://www.littlebird.co.jp/
◉草野店長の目利きで、ロンドン・フランス・アメリカから厳選された、状態の良い1960~70年代の古着のみを取り扱っている
筆者私物の1970年代のリーバイス®。ハンドメイドでミッキーの刺繍が施されている
写真提供・販売元:GROGGROG大宮店(埼玉)https://www.instagram.com/groggrog_omiya_vintage/
◉アメリカで買いつけた個性的でレトロかわいいヴィンテージワンピース、スカート、トップスが揃う
③自分で情報を集めて誰かに伝えたくなる楽しさ
自分で情報を集め、それを誰かと共有する楽しさも、ヴィンテージ古着の魅力のひとつです。
例えば、ヴィンテージ古着の中でも人気があるジャンルを1つ挙げると「ヴィンテージデニム」があります。その中でもアメリカのリーバイス®は圧倒的な人気を誇るブランドの一つ。レアなモデルだと1,500万円という価格で売れたケースもあります。日本人がその価値を見出し、世界的に高騰させた歴史を持つと言われており、価値を上げてきたと言われています。そして市場からは徐々にデニムが枯渇し、価格は上昇し続けています。
実は現在、市場に流通する貴重なヴィンテージデニムはアメリカ本土よりも日本に最も集まっているのではないかと言われています。1990年代のブームの際に今よりも安価で手に入れた日本人のコレクターから入手するか、日本のヴィンテージショップのストックから購入することがコスパの良い入手経路と言われています。事実、東南アジアの富裕層が日本のヴィンテージショップでこれらを投資目的で購入しているという話も耳にします(複数のヴィンテージショップ店長談)。そう聞くと、少し興味が湧いてきませんか?
人気のあるものでは例えば、「大戦モデル」と呼ばれる、1942年第二次世界大戦中にリーバイス®が製造・販売したデニムパンツのモデル。戦時中の物資規制で使える素材が削られ絞られた結果、無駄がそぎ落とされた洗練された形が実現したと言われています。ボタンはリーバイス®の刻印ボタンではなく月桂樹ボタンに。ポケットは糸を節約するためにペンキでプリントされたペンキステッチに。ポケットのスレキは白い布を使えなくなり、シャツやデニム等を代用して作らなければならなかった物も存在するなど、特殊な特徴を持った面白い個体が多く発見されています。
女性におすすめなのはリーバイス®701XXモデル。女性向けとして初めて登場したハイウエストジーンズでマリリン・モンローが着たことで人気に火が付き、作業着ではなくファッションとしての着用が広がりました。通称「モンローデニム」と呼ばれています。
701XXは1930~1960年代までしか製造されていないといわれています(90年代STUDENTモデルは除く)が、本家リーバイス®で復刻モデルLEVI’S® VINTAGE CLOTHING(通称LVC)が販売され、ハイウエストデニムブームもあいまって現在大人気を集めています。
情報収集、情報交換、その歴史や背景を知ること、そして数ある商品の中からお目当てのものを発掘する過程。これらもヴィンテージ古着の魅力の一部です。
★時代を読み解く3つのキーワード
今回のテーマ「ニューレトロなヴィンテージ古着ブーム」から抽出できるキーワードは以下の3つです。
❶空間を越える➜「時空を超える」
インターネットの普及により、私たちはさまざまな場所に常時接続する生活を送るようになりました。リモートワークもできるようになって「空間」の壁を超え、次に来るのは「時空」を超える感覚の時代でしょう。
❷「ニューレトロ」:古いものが新しい、レトロなものを現代に馴染む形で取り入れる
古いものに新しさを感じ、レトロを現代的なスタイルで取り入れるニューレトロ。
古いものを引っ張りだしたり、古き良きものを新しい形で取り入れたりして、再評価する動きに注目です。
❸無理せずサステナブルな自己探求
人々は自己探求の過程で、無理なく持続可能な方法を求めています。このサステナブルな自己探求の姿勢に寄り添う企業が共感を得られることでしょう。
新しい時代のターゲットのインサイトを抽出し、それに応えられる商品をつくれると、ヒットを生み出せます。ぜひ、この最新のインサイトを活かしてみてください!
阿佐見綾香(あさみあやか)
電通第4統合ソリュ―ション局・戦略プランナー。企業や商品・サービスのマーケティングや商品開発、リサーチ、企画プランニング、コミュニケーション戦略立案などを担当。GIRL’S GOOD LAB(旧・電通ギャルラボ)研究員として、時代とともに変化する女性インサイトと消費トレンドを研究。著書に『電通現役戦略プランナーの ヒットをつくる調べ方の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)。
ビジネス見聞録WEB10月号 目次
・p1 収録の現場から〈原邦雄「人と組織を伸ばすほめ育マネジメント」音声講座〉〉
・p2 講師インタビュー 佐藤将之「アマゾンに学ぶ!成長し続ける組織のつくり方」
・p3 今月のビジネスキーワード「ChatGPT」
・p4 令和女子の消費とトレンド「ニューレトロなヴィンテージ古着ブーム」
・p5 展示会の見せ方・次の見どころ