たった1秒待つだけで…
どうですか、この景色。古くから継承されてきた棚田です。新潟県の十日町市の郊外に広がる絶景。仕事でこの地を訪れたのですが、空き時間を使って足を延ばしてみたら、十日町市の魅力に触れることができました。
新潟は私の暮らす東京からちょっと距離がありますから、仕事を終えた後はどこか近隣の宿にでも泊まろうかと考えていました。で、出張に赴く前に、これはと感じた宿に電話してみました。けっこう名の通った旅館です。
残念ながら、私が希望する日は部屋に空きがないとのことでしたので、それは仕方ないと諦めたのですが、私がお伝えしたいのはなにかといいますと…。
宿の人が「この日はお受けできません」と告げた後、私から「ではまた次の機会に…」と言いかけたところで、電話を向こうから切られたのでした。
どうしてあと1秒待てないのか、と私は思いました。忙しい時間帯を避けて電話していたとはいえ、宿の人にも事情はあったのかもしれません。それでも、ネット経由ではなく、あえて直接に電話した立場からすると、残念な対応に感じられました。これ、やられてみるとお分かりになると思いますが、かなり後味は悪いものです。
電話を終えた後に考えました。個人的なとまどいではありません。全国各地のブランディング事業をお手伝いしている立場からすると、ああ、もったいない話だなあと…。
あとわずか1秒程度のことなんです。その1秒で宿に対する印象が大きく揺らぐのであれば、1秒を大切にしてほしい、と私は感じました。「地域にとっての真の危機」が、もしこれから当分の間も続くと捉えるならば、なおさらの話です。宿のことに限ったものではないのは言うまでもありません。
近年は宿もホテルも(あるいは観光関連以外街の一般的な物販も)、ネットでの予約や購入が定着していて、私も普段はそうしたサービスを利用することが多くあります。それでも、今回のように直接電話するケースも少なくありません。細かなリクエストをかける必要があるときなど、ネットだけでは事足りない場面があるからです。
電話を受ける側からも考えてみましょう。消費者から直接、肉声でアクセスするシーンというのは、事業者にとってはある意味で好機です。その消費者をファンにできるチャンスだから…。そのせっかくの機会を、ちょっとしたことによってフイにしてはならないと思います。