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製造業

第296号 楽にする

柿内幸夫─社長のための現場改善

 今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実例を挙げて解説します。  

 【急所6】動作の数を減らす。(26頁)

 先回に引き続き、「動作経済の4原則」についてお話しします。今回は動作経済の4原則の最後、4つ目の「楽にする」です。
 
 《動作経済の4原則》
(1) 距離を短くする。
(2) 両手を同時に使う。
(3) 動作の数を減らす。
(4) 楽にする。
 
 同じ作業をするのでも、楽にできる時とそうでない時があるとすると、楽な時の方が作業効率も上がり、品質も上がります。これは、誰にとっても当たり前のことです。
 
 しかし、「どうやったら楽に仕事に改善できるのか」と考える、とけっこう難しいものです。〝あっちを立てるとこっちが立たず〟状態になったり、そうするべきなのは分かっているけど条件的に難しいとか、なかなか決定的なアイデアが出ない状態になってしまい、結局実行が後回しになることもよく起きています。
 
 そこで、動作経済の4原則を順番に、着実に、実行するのです。すると、毎回の改善項目を絞ることで、余計な議論や後回しを避けることができます。
 
 ところが、ここで一つ問題が発生する可能性があります!
 
 例えば、動作経済の4原則の最初の3つの原則を順番に実行してきたとしましょう。
 
 部品や工具を近くに置き、両手が同時に使えるような条件を設定し、無駄な動作が発生しないような改善を行いました。実は、この最初の3つを実行すれば、標準動作そのものはほぼ完成します。
 
 しかし、ここで安心してしまい、あとはよろしくお願いしますとしてしまうと大きな問題が起きます。
 
 作業は標準化できても、人には体型や体調などの違いがあります。そのことを考慮しないと、以前より仕事がやりにくくなり、楽どころか苦痛になる人が出てしまうこともあるからです。
 
 B社では、これまで座り作業で組み立てをしていました。作業台の高さや大きさはすべて一律でした。作業者の身長や手の長さなどの体型は、もちろんそれぞれ違うので、作業者は椅子の高さや部品の置き方を調整して、自分にとってベストの条件を作り上げてきていました。
 
 ただ、商品が多品種少量化する過程で、これまでの分業体制から一個づくりに変化しており、可動範囲が狭い座り作業ではどうしても無理がある状態になったので、立ち作業化をすることにしました。
 
 B社では、動作経済の4原則の最初の3原則を使って立ち作業の際の作業台やレイアウトを検討し実行しました。しかし、ある一人の平均的な体型の人をモデルにして、すべての設計をしてしまったのです。
 
 すると、座り作業の時は椅子の高さの調整ができましたが、立ち作業となるとそれができません。その結果、中には視野が狭くなったり腰が曲がったりと、とてもやりにくい仕事になってしまう人が出てきたのです。
 
 原因は4番目の「楽にする」という点での改善ができていなかったからです。しかし、それに気付いてからのB社の対応は機敏でした。
 
 どうやったらもっと楽に仕事ができるかをみんなで議論して、できることをその場で即座に実行しました。作業台の高さを各個人の身長に合わせて調整し、足元に疲れ対策のマットを敷き、すべてが近く見えて分かりやすく、かつ足が適度に動くように部品・治具・工具をレイアウトし、明るさもすべて見直しました。
 
 アイデアの多くは現場の方たちから出たのですが、きわめて有効でレベルの高い意見がたくさん出されました。それまでこのような話し合いの場がなかったということでしたが、あまりの素晴らしさに、これからも継続的に改善の話し合いを持つことに決まったとのことでした。
 
 この文章を読んだらすぐに現場に行って、それぞれの作業が楽に実行されているかをチェックしてください。よろしくお願いします。
 
 
 
 
 
 
 
 

296.jpg

copyright ゆきち先生 http://yukichisensei.com/

 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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