取引先も売上もない「価値ゼロ」の会社を引き継ぎ、取引先の開拓や経営改革を次々と断行。わずか10年で高収益企業をつくりあげた平鍛造株式会社 元社長の平美都江氏。この度「利益爆発の経営法則」音声講座の発刊にあわせ、利益を生み出す仕掛けづくり、社員の生産性の高め方、リーダーのあるべき姿勢、一倉社長学から学んだこと…について具体的にお話をいただきました。■平 美都江(たいら みとえ)氏/平鍛造㈱ 元社長/㈱インプルーブメンツ 代表取締役社長
1977年、父・昭七が設立した平鍛造株式会社に入社。父の天才的な技術で製造される超大型鍛造リングにより、他の追随を許さない企業として急成長を遂げる。しかし、リーマン・ショックによる景気悪化などにより受注量が激減。型破りな父による強引な客先交渉が裏目に出て、2009年に廃業する事態に。会社存続の危機に追い込まれる中、同年、代表取締役社長に就任。数々の経営の合理化を進め、数年で業績を回復させる。2018年、大手企業へ株式を90%譲渡し完全子会社化。著書に『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか』(ダイヤモンド社)、『スタートアップ倒産させない絶対経営10の原則』(同社)などがある。
全ての社長は「利益爆発」を胸に刻め!
Q 再建を進める中、社長として心掛けていたことはありますか?
「いい会社と悪い会社があるのではなく、いい社長と悪い社長がいる」「会社は99.9%社長で決まる」という一倉定先生の教えを心に刻んでいました。
全ての責任は社長にあるということです。それからトップセールスをするということ、事業計画自体も社長が作らくてはいけないということ、環境整備の考え方、資金運用や現金の重要性など、お金に関わることも参考にしました。
30代で専務になったとき、損益分岐点や粗利、事業計画…営業先で経営のことを聞かれても全く分かりませんでした。それが悔しくて、たまたま新聞広告に載っていた『一倉定の社長学全集』を買ったのが先生との出会いです。
この10冊の本を何回も何回も読み直し、基本的な「一倉社長学」のコアな部分は体に叩き込んだと思っています。これが経営を行っていく上で本当に、役に立ちました。
私は「利益爆発」という言葉をよく使います。爆発的な利益を生み出すという意味です。一倉先生も仰っていましたが、利益なくして事業継続はあり得ません。製造業でも建設業でもサービス業でも関係なく、会社が永く続き、社員も顧客も社会も幸せになるために「利益爆発」は大切な言葉です。
社長営業と設備投資が利益爆発の源泉
Q 会社を立て直すため、初めに取り組んだ事を教えてください。
人手不足で仕事もない。銀行からは「おたくに貸すお金はありません」と言われる始末。「価値ゼロ」の会社であることを自覚してから、とにかく「営業活動」と「機械の整備」を始めました。
自社の利益を生み出すものは何か、ということを考え抜いて出した結論がこの2つでした。営業活動は、ほとんどが新規獲得のためです。仕事をお願いをしに、国内だけでなく海外にも行きました。社長がトップセールスになる、自ら営業することが後々、大きな利益をもたらしてくれると実感しました。
同時に機械の整備を進め、人手をかけないIT化・自動化を徹底しました。製造業は現場が命です。小さな工場を一つ売却して得た現金を投資して、製造設備に思い切って投資をしました。この決断のおかげで少人数で高い生産性を実現しました。
細かいところは『利益爆発の経営法則』音声講話の中で話しています。
我慢で成り立つ「愛社精神」はいらない
Q 社員に対してはどう向き合うべきでしょうか?
社長は全てにおいて自己責任です。だから私は、社員の行動も社長の責任だと思っています。私は、社員がチャレンジできる会社、やりたいことをやれる会社、そして、それに見合った報酬を出せる会社ということを心がけていました。
私は常に「会社のためにというようなことはお門違いだ、自分のために働け、自分の家族を幸せにするために働け」ということを徹底的に言っていました。
まずは自分のためにしっかり働く。不変の真理でしょう?この意識が社員一人ひとりの主体性を発揮させるために重要なんです。
会社を利用して、自己実現をさせる、チャレンジさせる、そして、結果を出す。その結果に対して会社が報酬をどんどん引き上げていく。このような組織づくりで会社を強くしていきました。
「愛社精神はいらない、自分の家族を幸せにするために働け」と。働くことに前向きになって、色々な仕事が出来るようになること、成長することが大切です。結果的には、社員の平均給与は、2021年の5月の時点で、県内平均の2倍になりました。
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