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マネジメント

第74回 『幸福源』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

人は、どんな生き方をしたときに、幸せを感じるものか。

第一に、自分がやりたいこと、好きなことを仕事にしている時。
第二に、自分がやっている仕事が、基本的に周囲から評価・感謝されていて、社会的な意義があるという自信と誇りが持てるとき。
第三に、仕事が収入と結びついているとき。
 この三つの条件が満たされたとき、人は最高の幸せを感じるものだと私は考えている。

だが、この三つを、すべて満足できるレベルで実感している人は、極めて少ないようだ。
 講演や研修先などで出会うビジネスマンの印象では、多めに見積もって、五人に一人(20%)くらいではないだろうか。
 残りの80%は、「第三の条件はどうにか満たされてはいるが、とくに好きな仕事でもなく、そう社会的な意義があるとも思えない」と感じているようだ。


父親から社長を継いだヤマト運輸の故・小倉昌男さんは、1976年、小口の個人客相手の宅急便というビジネスを考え出した。
 当時、会社の業績はジリ貧。これに社運を賭けると決断した。
 だが、周囲は大反対だった。特に、運転手にお客様も獲得してもらう「セールスドライバー」制度に反対が集中した。「集金や伝票処理までやってられるか…」。皆、そっぽを向いたという。

しかし、個人のお客様は、直接「ありがとう」と言葉をかけてくれる。これまでの企業相手の配達では考えられないことだった。
 この「ありがとう」が、ドライバーのヤル気を大いに駆り立て、やがて、「ドライバー制度」を受け入れていった。便利さがくちコミで拡がることとあいまって、宅急便は社会に欠かせないサービスに育っていった。

 例えば冬、山の上の一軒家にも配達に行く。相手が留守なら出直して、雪の山道を登って荷物を届ける。そんなとき、相手の顔に喜びが輝き、「息子からだよ。雪の中、本当にご苦労さんでした」と感謝の思いをぶつけてくると、ドライバーの苦労は、いっぺんに吹き飛んでしまうという。

 理屈から云えば、どんな仕事も、それがお金を生み出す以上、何らかの市場価値を持っている。役に立っているはずだ。
 問題は、「ありがとう」の言葉が、耳に届くか届かないかだ。それで、ヤル気は大いに変わってくる。
 「ありがとう」と言ってもらえるようになるには、どうしたらいいのか?
私は、自分が相手に「ありがとう」という思いを持つことだと考える。
 「つまらない」「価値がない」と思っているかもしれない今の仕事。でも、その仕事で、あなたは毎日暮らしていけるのだし、社会人として生きていくノウハウを吸収してもいるはずだ。

 まず、仕事に無かって「ありがとうございます」という、感謝の念を持ってみよう。お客様に向かって「ありがとうございます」という感謝の思いを持ってみよう。
 そうすれば、自分の仕事に、社会やお客様が感謝してくださっていることがわかってくるはずだ。

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