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マネジメント

第35回 『机に座って現場は見えない』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

これだけ市場や技術の変化が激しい時代にあっては、過去10年うまくいっていたからといって、
この先どうなるか判るものではないし、成功と思ったときは没落の始まりであったという事態も無きにしもあらずだ。
それを考えたとき、今日ほど、リーダーに“先を見通す眼”が求められている時代はないのではなかろうかという気がしている。

もっとも、だからといって「時代の変化に“対応”していかなければならない」
といった言葉を耳にすると、「?」という気持ちがわいてくるのが素直なところだ。

多少、言葉尻をとらえた議論にナルガ、「対応していかなければならない」というのは、既に起きてしまっていることに対する
もので、後追いの発送から抜けきっていないからだ。新幹線に遅れそうだからタクシーを使おうというのと同じ発想で、
いかにも事後対策の感を免れない。


リーダーたるもの、変化を見越して先手先手で戦略を練り、戦術を具体化していく先取り感覚が必要になる。
新幹線に乗り遅れないためにはどうすべきか、何時には仕事を切り上げて駅に向かう必要があるのか、
つねに心に留めておくことが大切だ。

とはいえ、ただ先取りすれば良いという訳ではない。
早く駅に着きすぎて、予定より2本も3本も前の新幹線に飛び乗ったのはいいが、
肝心の同行者(部下)や乗客(消費者)が誰一人として不在ということでは、これまた問題である。


二歩三歩先ではなく、半歩先。このさじ加減は非常に微妙だが、社長室を出て工場に出向いたり、
街を歩き顧客に声を聞いたりする中で感じ取る以外、これを身につける方法はないと思っている。

個室にこもりがちな社長は「穴熊社長」と呼ばれ、
その反対に、フットワーク軽く街を歩き気軽に現場に出向く社長を「猟犬社長」と言っている。

かつて、詩人の寺山修司氏は『書を捨てよ 町へ出よう』と若者達に語りかけた。
また、世界有数の企業の会長室にはこんな言葉が掲げられている。

“A desk is a dangerous place from which to watch the world”
    (机に座っていて世界を見るのは危険なことである)

言うまでもなく、「穴熊」対「猟犬」。「書斎派」と「現場派」とであれば、断然、「猟犬派・現場派」を支持したい。



新  将命     

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