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マネジメント

第115回 『一流をマネる』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

業績絶好調のある住宅リフォームメーカーでは、昇進のたびに、
いったん営業の第一線に戻るというシステムをとっている。
 
この会社では、新入社員は全員、営業を経験する。
 
獲得した契約件数に応じて、小さな「☆マーク」のバッジを胸につけることも
義務づけられている。
 
獲得件数が多いほど、☆マークをもらえるわけではない。
 
評価の対象になるのは、下限はあるが、自分が
≪これだけの契約をとってみせる≫と申告した件数の達成率である。
達成率が70パーセントを超えると、☆ひとつという具合。これを毎月繰り返す。
 
そして、☆が6個に達すると、はじめて希望配属先を申告することができ、
やがて正式な配属先が決まるという。
 
ただ営業所で待っていたのでは、住宅リフォームの注文は飛び込んでこない。
各戸を1日に100件、150件と廻る。話を聞いてもらえるのが2、3件あるかないか。
そこから契約に結びつく確率はさらに低い。
 
「それはつらいでぇ」と社長自らが言うくらいだから、営業活動の大変さは
相当のものであろう。
 
だが、この会社の収益源はあくまでも、こうして一件、また一件と獲得していった
営業努力の末にもたらされたものなのだ。
 
それぞれの部署で仕事するようになると、営業の辛い努力をつい、忘れがちになる。
 
そこで、この会社では、昇進のたびに原点に戻り、
再びドアからドアへとチャイムを鳴らして契約を掘り起こす…、
そんな体験をさせるというのだ。
 
こうすることにより、営業スタッフを見る目も違ってくる。さらには、
自分の日々の生活はお客様あってのものだという視点が自然に生まれてくる。
 
 
オフィスワークのビジネスマンは、つい、会社の収益の原点を忘れがちになる。
 
企業活動の源泉、ひいては、自分の仕事の源泉がどこにあるか。
それを忘れることがなければ、
自然に、お客様に対して、心の底から感謝の念が湧いてくる。
 
 
松下幸之助氏がいかに素晴らしい人間性の持ち主であったかを伝える逸話には
こと欠かないが、私が今も心に深く刻み込んでいるのは、次ぎの話である。
 
どこのメーカーでも、全国の販売店から成績優秀店を招いた感謝の集いを開き、
中でも特別に成績優秀な店は、皆んなの前でにぎにぎしく表彰する。
 
私もこうした会に居合わせたことが何十回とあるが、どこの会でも、
会社側が壇の上にずらりと並び、販売店は檀の下のフロアに座っている。
表彰される店は名前を呼び上げられると壇上に上がり、会社側から表彰を受ける。
これが、普通のやり方だ。
 
だが、松下ではそうではなかった。
 
いよいよ表彰という段階になると、会社側は壇からおりる。
そして、表彰者を壇上に登らせ、幸之助氏は壇下のフロアから、
壇上の優秀販売店を表彰したというのである。
 
口では「お客様は神様」といいながら、ほとんどの経営者は、
表彰する段になっても、自分たちが壇上に上がっていることを不思議に思わない。
 
だが、幸之助氏は、自然にこういうことができた。
それこそ、第一級の人間力の持ち主だと感じ入った。
 
後年、幸之助氏の存命中、会社が経営危機におちいった際には、
販売店はもちろん、お茶屋さんまで損得抜きで
「松下に協力する」と申し出たことはあまりにも有名な話である。
 
そういえば、幸之助氏は、行きつけの料亭が畳替えをしたときなど、
必ず、「畳替えをしたね。いいねぇ」と言ったそうだ。
 
ほかの人は、料亭が年に一回畳替えをすることなど当たり前だと、
わざわざそれを口にはしないものだ。
だが、そう言われる料亭の方は、やっぱり嬉しい。
 
 
こういうことというのは、凡人にはなかなかできないことだ。
では、どうしたらいいか。
 
私は、まず、モノマネから入ることを自分に課してきた。
モノマネというと語弊があるが、
「真似(まね)ぶ」⇒「マナブ」⇒「学ぶ」という言葉の進化が示す通り、
マネることは、学ぶことの第一歩なのである。
 
ルーブル美術館など欧米の著名な美術館に行くと、
名画の前で模写に励んでいる画家の卵によくいき会う。
許可をとって模写をしているのだそうだ。
 
芸術の真髄はオリジナリティーにあると考えられがちだが、
オリジナリティーを発揮する基盤となるテクニックは、
徹底的に模写を繰り返すことによって、次第に身についていくのだそうだ。
 
 
ビジネスマンにも同じ手法が通じるはずだ。
 
一流の人物を手本にマネをしていれば、マナビが生じる。
マナビは、学びに通じる。
時間の経過とともに、だんだんと自分が一流に近づく。
 

 

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