「こんなに働いているのに、ウチの会社、給料安いよなぁ」
居酒屋に行けば、あっちのセキでもこっちの卓でも、こんなオダをあげている。
だが、最近の若いビジネスマンのオダは陰々滅々したところがなく、
どことなく軽やかで、明るいのが救いだ。
もっとも、閉塞感にさいなまれている人は、こんなふうに仲間と飲んだり、
しゃべったりすることもできなくなっているのかもしれないが…。
そして、私が講演などの機会に見聞きする限り、組織や社会に対して、
どうしようもない閉塞感にとらわれてしまっている若いビジネスマンはかなり多い。
経営者側の本音をいえば、
入社から数年間は給料を払ってトレーニングをしているという感覚が強い。
30代に入る頃になれば、もちろん、かなり役立つようになってきてはいるが、
まだ、大きな責任を預けるにはいたらない。そうそう高い給料は払えない。
仕事のスキルを磨くのは、一にも二にも経験だ。
平凡で、ほとんどビジネスなど何も知らない人間が、
社会に出て10年、15年、さまざまに経験を重ねることによって、
しだいにその分野のエキスパートになり、ついにはリーダーになっていくのだ。
その間は、給料よりもよりたくさんの、できれば、少々困難な経験を積む機会を、
積極的に求めた方がよい。
使い走りのボーイから出発し、8年間夜間に通って学位をとり、
それから税理士として働き始め、ついには、超優良企業・ITTの社長に上り詰め
14期半連続増益という、米国企業史空前の記録を打ち立てたハロルド.ジェニーン氏は、
「人は自らの努力による経験によってのみ、何かを勝ち獲ることができる」
と述べている。
ジェニーン氏によれば、
≪経験とは、能力の成長と蓄積をもたらすプロセス≫ なのである。
30代はとくに経験を蓄積し、自らの将来への基盤をしっかりつくる時期だと
考えるべきなのだ。
だから、できるだけ積極的に経験を増やした方がいい。
たとえ、失敗したとしても、失敗経験から、ひょっとしたら
成功した場合以上の経験を得ることができるかもしれない。
こうして意義ある経験を積んでいけば、金銭的な報酬は必ず後からついてくる。
1980年代、病める巨人となっていたGEを、
それまでの電機メーカーから、金融などへのシフトにより、
奇跡の改革と再生を実現してみせたG.ウェルチ氏は、
どんなに経営が厳しいときでも、年間10億ドルを社員教育に投じていた。
この投資が後の再生への起爆力になったともいえる。
「勝ち組」と「負け組」の差は、「学ぶ心」の有無にある。