学生であれば、試験結果がいいとかモノ知りであるといったことを“頭がいい”と称するが、
ビジネス社会となるとそう単純ではない。
ビジネスでは、状況判断が的確で、問題解決能力が高い人に対して“あの人は頭がいい、
切れる人だ”というような形容詞をつけることが多く、知識が豊富なだけではこうは云われない。
ある山奥の川に「金の塊」があると聞いて、探しに出かけた男が二人いた。一人は川の中から金の塊そのものを見つけ出し、
もう 一人は、金の塊がどこから流れてくるのかを調べて金の鉱山を見つけたとする。ビジネス社会において“あの人は頭が
いい、切れる人だ”と云われる人材は後者だ。
つまり、ビジネスで求められる“頭の良さ”とは、
「頭の回転が速いこと」「読みが深いこと」「勘が鋭いこと」と置き換えてもいいことになる。
頭の回転が速いということは、“同じ結論に達するにしても、人より早く到達できる”ということだ。
このように、頭がよい、切れるとは、一般的に“正確で早い反応”を意味する。
そして、この正確で素早い反応とは、「知識」と いうよりは「知恵」の部類に入る。
知識に対して知恵―――。では、知恵を高める要因は何かといえば、「謙虚さ」「素直さ」「向上心」である。
たとえば、同じ情報を得ても人によって反応や行動が異なる。これは判断力の差だ。
判断力は、自分のそれまでの知識とか体験を 一度ゼロにして、
素直な気持ちで謙虚にユーザーの声を聞いたり、データの数字を見ることによって培われるものだ。
それも一度だけでは身につかず、粘り強さや向上心を発揮して何回も繰り返してこそ自分のものとなってくる。
社会に適応していく能力が「知恵」であり、それが最終的には「謙虚さ」「素直さ」「向上心」といったものに依存しているならば、
今からでも十分に高めることができる。知恵は知識に比例するものではなく、学歴とも原則的には無関係なのだ。
あるいは、知恵は学習能力を高めることによって身につけることができる。
的確な状況判断力、高い問題解決能力を備え、ビジネス社会で“頭がいい、切れる”
と形容される人は、この学習能力が高いともいえる。
ビジネス界の成功者に共通する強烈な個性、創造性、優れた状況判断能力、リーダーシップ力は、
決して学問的知識によって身に つけたものではない。
「謙虚さ」「素直さ」「向上心」などをもって学習能力を高め、知恵を磨いたからこそ自分のものとなったのだ。
新 将命